
来年で30周年を迎えるバンダイの携帯型ゲーム機「たまごっち」が再びブームとなっている。国内外の累計販売台数は1億台目前。12日に発売した新作も20、30代を中心に予想を上回る売れ行きだという。新作の魅力や、好調の背景を聞いた。
機能は進化、でも新作は原点回帰
新作「たまごっちパラダイス」(全3種、各6380円)は予約数で2023年発売の前作の4倍を超えた。発売1週間での売り上げ台数は、計画比の1・5倍となった。
たまごっちは、卵型の本体に液晶画面、3つのボタンがついた構造で、画面に映し出されるキャラクターを餌やりなど世話をして育てるゲーム。基本設定は1996年に発売された初代から変わっていないが、赤外線通信(04年)や、液晶画面のカラー化(08年)、Wi-Fi(ワイファイ)の搭載(23年)など新しい機能を備えた機種を発表している。
バンダイでたまごっちの開発を担当するトイ事業部の青柳知里さんは新作について、「おもちゃらしく原点回帰した」と話す。本体上部につけた「ズームダイヤル」や、無線通信をあえてなくしたアナログな仕様とした。
「自分だけのたまごっち」育てる楽しさ
ダイヤルを回すと、キャラクターが暮らす惑星がある「宇宙」からキャラクターの体の「細胞」まで視点を拡大・縮小して世話ができる。2台のたまごっち本体を接続させる「ツーしん(通信)」で、他のキャラクターとの交流が可能。キャラクター同士の相性により、子供ができることもあれば、けんかをしたり、食べられて「うんち」になって戻ってきたり。亡くなったキャラクターを弔う機能もあり、本物のペット同様に命の大切さを感じ取ることもできる。

世話の仕方や環境、遺伝によって育つキャラクターが異なり、今回その数は5万種類に上る。SNS(交流サイト)の投稿をみると、育成したキャラクターのかわいらしさを語る人のほか、たまごっち本体を自作のカバーなどで装飾する人など「自分だけのたまごっち」を育てる楽しさがうかがえる。
ブーム知る親が子供と楽しむ
たまごっちシリーズは現在、約50の国と地域で販売。累計販売台数は25年3月時点で9810万台と1億台に迫る。ちなみに携帯型ゲーム機で1億台を突破したのは、任天堂の「ニンテンドースイッチ」「ニンデンドーDS」(各約1億5000万台)などだ。
スマートフォンの普及などで携帯できるゲームは無数にある。なぜたまごっちが人気を集めているのか。青柳さんは「携帯型デジタルペットゲーム機の元祖というブランド力が大きい」と話す。
たまごっちのブームは、初代の96年と04年の2回。今回の購入層を分析すると、04年のブーム時に遊んでいたとみられる20、30代がそれぞれ2~3割を占めた。「過去に遊んだ思い出から、大人になって懐かしんで手に取っているのでは」とみる。ブームを経験した世代が親になり、ブームを知らない子供と親子2代で楽しむ様子もうかがえたという。

周辺ビジネスの拡大も大きい。食玩や化粧品など関連商品の売り上げは19年から24年で約7倍に伸長。6月にはニンテンドースイッチ、スイッチ2ソフト「たまごっちのプチプチおみせっち」シリーズも約20年ぶりに発売され、相乗効果があったとみている。
青柳さんは「来年の30周年には、ファンの皆さんが楽しんでもらえるような仕掛けを検討したい」と意気込んでいる。【嶋田夕子】
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