くちばしを使って近くにいる仲間をいじめる乱暴なニワトリを見分ける手法を開発し、名古屋大などの研究チームが特許を出願して受理された。ニワトリの攻撃は肉や卵の生産性を下げる要因となる。品種改良で温和なニワトリにして育種できれば、平和な養鶏環境が作り出せると期待される。
ニワトリはふ化して数週間後から、餌や縄張り争いで羽突きや羽食い行動がみられるようになる。エスカレートして相手を殺してしまうこともある。肉や卵の生産性を低下させるため、昔はくちばしの先端を切り落とす対策が取られていた。現在は動物福祉の観点で禁じられ、新たな対策が急務となっている。
チームは、羽突きが少なく温和な日本鶏「龍神地鶏」と、羽突きが多い外国産「ロードアイランドレッド」を交配。263羽を作って飼育し、ふ化後55週の時点で突かれて羽が抜けた面積と皮膚の赤みをスコア化し、遺伝子との関係を調べた。
すると、39対ある染色体のうち、8番目の染色体の特定の領域の遺伝子が、龍神地鶏に由来する配列だとつつかれていじめられやすいことが分かった。ロードアイランドレッド由来だと乱暴で相手をつつきやすかった。この領域が攻撃的か温和かに深く関与しているといい、特定する目印を見つけて性格を見分けるツールも開発した。
ツールの有効性を確かめるため、国内で飼育される8品種46~110羽を対象に、遺伝子から突き行動の有無を調べ、実際の行動と比較した。すると、ロードアイランドレッド由来の遺伝子を持つ個体は攻撃的と区別できた。
この領域の遺伝子を龍神地鶏に由来するように品種改良すれば、温和なニワトリを作り出すことができるという。研究チームの石川明・名古屋大准教授(動物遺伝育種学)は「皮膚に傷が入ると鶏肉としての価値が下がって出荷できなくなる。動物福祉の観点から、ケージでなく放し飼いにする場合は、攻撃性を取り除くことが大切だ」と話す。【渡辺諒】
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