九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)が新規制基準に適合するとした国の判断は火山リスクの検討が不十分だとして、鹿児島県や熊本県の住民らが原子力規制委員会の設置変更許可を取り消すよう求めた行政訴訟の控訴審判決で、福岡高裁(松田典浩裁判長)は27日、取り消しを認めなかった2019年6月の1審・福岡地裁判決を支持し、住民側の控訴を棄却した。
川内原発1、2号機は、それぞれ1984年と85年に営業運転を開始。11年の東京電力福島第1原発事故を受けて運転を停止したが、14年に規制委の新規制基準の適合性審査に全国の原発で初めて合格し、翌15年に再稼働した。
訴訟は鹿児島、福岡、東京など10都県の33人が16年6月に提訴。新規制基準に基づき、規制委がまとめた指針「火山影響評価ガイド」の内容や審査の合理性が争点となった。
1審は火山ガイドについて「科学的知見が確立していない疑いが残る」と疑問を投げかけたものの、不合理とはいえないと指摘。破局的噴火(巨大噴火)の頻度は低く、危険性が相応の根拠をもって示されない限り、合理的に予測される範囲を超えてまで対策を講じていなくても容認されると判断した。国の設置変更許可を違法とする証拠はないとして請求を棄却したため、住民側が控訴していた。
住民側は控訴審で、川内原発の160キロ圏内には五つの巨大噴火の跡(カルデラ)があるとし「巨大噴火のリスクを十分検討していない」と主張。国側は巨大噴火が差し迫った状態ではないなどとして控訴棄却を求めていた。【森永亨】
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