「手元で保有」 増えた原因は日銀に? タンス預金は60兆円規模か

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発行された新紙幣=大阪市中央区のりそな銀行大阪営業部で2024年7月3日、川平愛撮影
発行された新紙幣=大阪市中央区のりそな銀行大阪営業部で2024年7月3日、川平愛撮影

 金融機関に預けていない「タンス預金」は60兆円規模か――。具体的な調査ができず把握のしづらい数字だが、日本銀行券(紙幣)を発行する日銀が真正面から推計に挑んだ。その分析に迫ると、自らが増加に関わったかもしれない実態が透けて見えた。

 銀行に預けるより現金を手元に置いて安心したい人。小遣いからひねり出した「へそくり」をためている人。故人の遺産をこっそり隠している人。こうしたタンス預金の全体像を計る手段は確立しておらず、「あえて確認されないように持たれていることもあり、きっちり推計することは難しい」(日銀関係者)というのが現実だ。

タンス預金で新紙幣切り替え緩やかに?

 それでも日銀は実態に迫ろうとするリポートを7月に公表した。題名が示すように「新しい日本銀行券の流通状況」を調べる一環で必要と判断したためだ。

 2024年7月、日銀は新紙幣の発行を始めた。実業家・渋沢栄一の肖像が描かれた1万円札など新札を目にする機会は以前と比べると増えたようにもみえる。

 しかし、新旧の切り替えは前回新札を発行した20年前の同期間と比べて半分程度の約3割にとどまっている。内訳をみると、1000円札と5000円札で4割程度まで切り替わったものの、1万円札だと2割程度に過ぎなかった。

 紙幣の流通を管理する日銀としては円滑な切り替えを進めたい考えだ。だが、前回と比べてペースに違いがあるのはなぜか。日銀はその一因に「タンス預金」があると着目した。

 紙幣の発行残高はこの20年で約60億枚増え、約170億枚に達している。内訳をみると高額の1万円札の増加が目立ち、04年末の70億枚から24年末には115億枚まで増加した。全体の発行残高を押し上げたのは1000円札のような小額券ではなく高額券だった。

 お札が商取引の現場で実際に使われれば金融機関を通じて日銀に還流し、おのずと新紙幣への切り替えが進みやすくなる。一方、取引ではなく現金そのものが価値の貯蔵などを目的に保有される傾向が強まると、市中に滞る可能性がある。

 以前より新紙幣に切り替わらず高額券の発行残高が増えてきた状況は、「タンス預金を含む取引以外の目的による保有が増えていた可能性を示唆している」と分析した。

発行残高の伸び率とGDP比で推計

 日銀はこうした想定を踏まえつつ、タンス預金の推計に取りかかった。

 まず、…

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