『あんぱん』嵩が「三越」入社 モデル・やなせたかしの当時の働き方を見ると「ツッパリ」「収入エグい」

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まず収入がすごかった

 2025年前期の連続TV小説『あんぱん』87話では、『アンパンマン』の作者、やなせたかしさんがモデルの「柳井嵩(演:北村匠海)」が、母「登美子(演:松嶋菜々子)」の「ちゃんとしたところに就職して、『のぶ(演:今田美桜)』さんを安心させてあげなさい。それが男の務めですよ」という言葉を受けて、「三星百貨店」に入社しました。

 やなせたかしさんも、上京後に妻の暢さんと暮らし、1947年10月に三越の宣伝部に入社しています。さまざまな書籍では、やなせさんは入社試験での態度が生意気だったということで、一度落とされたことが語られていました。しかし、井上慶吉さんという重役が「見どころがあるから」と推薦し、入社が決まります。

 その後、やなせさんは1953年3月にフリーになるまで三越で働きました。その間の自分の働き方について、やなせさんは著書『アンパンマンの遺書』で振り返っています。三越時代の章のタイトルは「ツッパリ社員」でした。

 新設の宣伝部は当初あまり仕事はなかったそうですが、店内装飾や看板のデザインなど、やなせさんは得意の絵を活かした仕事もするようになります。三越には三越劇場もあったため、文学座の演劇のポスターもよく描いたそうです。

 そして、三越で一生を過ごすつもりはなく、いずれ漫画家になりたいと思っていたやなせさんは、当時の社員としての自分に関して

「あまり気乗りしないまま新巻鮭の絵を描いたりしながら三越に務めていた」

「もし、その頃のぼくのような部下を持ったとしたら、ぼくでさえとてもがまんができなかったにちがいない」

「はじめから腰かけのつもりいるのだから始末が悪い」

「自由主義で、極端に束縛されるのをいやがるから、非常に使いにくい」

 などと述懐していました。

 器用で仕事が早く、毎日20分ほどで1日の必要な量をこなしていたというやなせさんは、残りの時間をマンガを描いたり、私用電話をしたり、外出したりと、自分のために使っていたそうです。また、権威嫌いのため、「平社員だからといってへりくだることはない、人間はみなおなじだ」と、わざと部長よりも高い弁当を食べていたことも語っています。

 出版業界の隆盛の時代にマンガの投書を多数していたやなせさんは、漫画家としての収入が三越の給料の3倍を超え、部長よりも稼いでいたそうです。そして、暢さんも働いていたこともあり、三越時代に夫婦で四谷の荒木町に42坪の家を建てています。

 それでも、やなせさんはフリーになる際に不安だったそうですが、そこで決め手になったのが暢さんの「収入がなければ私が働いて食べさせてあげる」という言葉でした。

 嵩の三星時代の働き方はどのように描かれるのか、のぶは嵩にどのような言葉をかけるのか、要注目です。

参考書籍:『アンパンマンの遺書』(岩波書店 著:やなせたかし)、『人生なんて夢だけど』(フレーベル館 著:やなせたかし)、『やなせたかしの生涯 アンパンマンとぼく』(文藝春秋 著:梯久美子)

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