明日『あんぱん』でついに「脚本家本人」登場? 文通してた、やなせたかしの10歳少女への気遣いや吐いた弱音とは

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とにかく優しかったやなせさん

『アンパンマン』の作者、やなせたかしさんと妻の暢さんをモデルにした2025年前期のNHK連続テレビ小説『あんぱん』108話では、詩集『愛する歌』が人気を博した「柳井嵩(演:北村匠海)」のもとに、「中里佳保」という小学生4年生の女の子からの手紙が届いたことが話題になっています。

『あんぱん』の脚本を担当している中園ミホさん(1959年生まれ)は、各種インタビューで10歳の頃に『愛する歌』を読み、やなせさんと文通をしていたことを語ってきました。『愛する歌』は特に女性人気が高く、当時やなせさんのもとには小学生から大学生まで、さまざまな女学生たちからもファンレターが届いていたそうです。

 NHK公式サイトに掲載された中園さんのインタビューによれば、彼女は父親を亡くした後に母親が買ってくれた『愛する歌』のなかにあった、「たったひとりで生まれてきて たったひとりで死んでいく 人間なんてさみしいね 人間なんておかしいね」という詩が心に残り、やなせさんに手紙を書いたそうです。

 すると、すぐに返事が返ってきたとのことで、中園さんは15歳くらいまでやなせさんと文通を続けます。その後、しばらく疎遠になっていたものの、中園さんは19歳のときに道で偶然やなせさんと再会し、そのままやなせさんの本の出版パーティーに連れて行ってもらったそうです。

 また、東京ニュース通信社が出しているドラマのガイドブック「NHK2025年前期 連続テレビ小説 あんぱん おたのしみブック」でのインタビューによれば、19歳の中園さんが母親が余命わずかで自宅療養していることを伝えると、やなせさんは母親に連絡して彼女を励ましてくれたといいます。

 そのほか、中園さんはやなせさんが会うたびに「お腹空いていない?」と気遣ってくれたこと、手紙で「物価があがっているけれど、ミホちゃんの家は大丈夫ですか?」と心配してくれたこと、一方で手紙のなかで「またお金にならない仕事をしてしまいました」と、小学生相手に愚痴をこぼすような一面もあったことを語っていました。

 また、中園さんは『あんぱん』の脚本を書くためにやなせさんとの手紙を探していた際、やなせさんのサイン入りの6歳の自分の似顔絵を見付けたといいます。中園さん本人の記憶は定かではないものの、連れて行ってもらったデパートの屋上で、やなせさんほか漫画家たちによる似顔絵コーナーが行われていたそうです。

 やなせさんは自伝『人生なんて夢だけど』で、漫画家も似顔絵を描けなければいけないと思い、針すなおさんや中村伊助さんの仕事に同行して似顔絵のノウハウを学んで、たびたび似顔絵の仕事も行っていたことを語っています。

 なにかとやなせさんと縁が深い中園さんは、今回の朝ドラの仕事の依頼が来る前、世界各地で戦争が起きるなかで、やなせさん(2013年に死去)が生きていれば何を思うのか、と考えるようになっていたそうです。そして、『花子とアン』(2014年)以来の朝ドラの脚本を依頼された際、NHKのプロデューサーの倉崎憲さん(『あんぱん』制作統括)に、かつてやなせさんと文通をしていたことを話そうとしたタイミングで、倉崎さんがやなせさんの本『僕は戦争は大きらい』を出し、必然的に今回のテーマが決まったといいます。

『あんぱん』で今後登場する少女、中里佳保は中園さんがモデルでしょう。ただ、108話の最後では「この少女のハガキが嵩の心をかき乱すきっかけとなるのです」というナレーションが入りました。また、発表されている109話のあらすじを見ると、祖父の「中里砂男」とともに柳井家を訪れた彼女は、「ニコリともせず辛辣な言葉」を言うそうです。

 佳保は中園さん本人とはまた違う、別の役割を担っているのかもしれません。

参考資料:『人生なんて夢だけど』(フレーベル館 著:やなせたかし)、「NHK2025年前期 連続テレビ小説 あんぱん おたのしみブック」(東京ニュース通信社)、「連続テレビ小説 あんぱん Part1」(NHK出版)

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