団塊世代が後期高齢者に突入し、親が介護施設に入るなどして住む人がいなくなった実家をどうするかが切実な課題となっている。そうした中、「実家じまい」の活用法として注目されるのが、実家を仮想現実(VR)で記録するデジタルアルバムサービス「パルミー」だ。
実家を360度カメラで撮影。編集した映像は専用タブレットや、オンライン上のアルバムから視聴できる。URLを伝えれば、家族や友人など離れた場所の人とも共有可能だ。
サービスを提供するのは、広告代理店のアイクリック(東京都立川市)。不動産仲介業者から「売却する家を記念に撮影したいというニーズが高まっている」と聞いたことがヒントになった。
物件をオンラインで見学できる技術「3Dウオークスルー」を転用し、昨年10月からサービスを提供している。税込みの料金は撮影費7万円、出張費は5000円から。これにオンライン視聴5000円から、もしくは専用タブレット視聴2万5000円が加わる。7月からは、東京都新宿区のふるさと納税返礼品にも採用された。
パルミーで撮影した「実家」のサンプル映像を見ると外観に加え、室内に飾られている写真や額に収まった賞状なども鮮明に確認できる。地図アプリと同じ要領で、視点を変えながら映像内を巡ることが可能だ。在りし日のリアルな実家の風景が保管され、家族と過ごした日々を振り返ることができそうだ。
住み人がいなくなった実家問題は空き家の急増にもつながっている。総務省の調査によると、全国の空き家戸数は2023年時点で900万戸と20年前に比べ3割以上増えた。中でも別荘や、賃貸売却用を除いた空き家は約385万戸を占め、20年間で2倍近くに急増している。相続したものの、手放せずに空き家として放置している人も一定数いるとみられる。
アイクリックは「思い出が詰まった住まいを簡単に手放せないと感じる人もいる。デジタルアルバムとして手元に置いたうえで手放す、新しい『実家じまい』を提案したい」としている。【嶋田夕子】
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