第96回都市対抗野球大会(29日・東京ドーム)
○姫路市・日本製鉄瀬戸内4―3さいたま市・日本通運●
野球にはセオリーが多い。そのうちの一つが「左打者には左投手をぶつける」だが、スタメン9人に左打者6人が並んだ姫路市打線にその手法は通用しない。左打者たちが奮闘し、さいたま市の好左腕・相馬和磨を打ち崩した。
象徴的だったのは1―0で迎えた二回2死三塁の場面だ。左打者の8番・福井圭祐は背中側から曲がってくるスライダーをじっくりと引きつけ、中前にはじき返す適時打とした。
「左対左」のお手本のような打撃だ。
「引っ張りにかかっては駄目。センター中心に、ショートの頭を越えるイメージだった」と福井。2点リードの四回は真ん中付近の球を中堅左に運び、2点二塁打とした。
チームは相馬が四回途中に降板するまで計7安打を浴びせた。そのうち5安打は左打者によるもの。さいたま市の沢村幸明監督を「甘く入ったところをうまくシャープに打たれた。良い打線だった」と嘆かせた。相馬から挙げた4点を生かして逃げ切った。
さいたま市は相馬と本格派右腕・冨士隼斗が左右の二枚看板だ。沢村監督は初戦を相馬に託した理由として、姫路市打線の左打者の多さを挙げた。
だが、それは姫路市の望むところだった。今年の近畿2次予選では先発オーダーに左打者が7人並んでいたこともある。
普段から左投手をぶつけられることが多いといい、福井は「左投手が来ることは常に想定している。元々は苦手だったが、経験を重ねたので今は嫌じゃない」と話す。
チームでは打撃練習から左投手を念頭に置き、左打者が右足をしっかりと踏み込み、中堅から逆方向にライナー性の打球を飛ばすことを徹底する。練習と試合で試行錯誤を積み重ね、苦手意識をなくしてきた。
沢村監督との熊本工高の同級生対決を制した米田真樹監督は「今までやってきたことが素直に出た」と穏やかな顔で振り返った。
白星は14年ぶり。当時は東日本大震災の影響により京セラドーム大阪での開催で、東京ドームでの勝利は2006年までさかのぼる。伝統ある「広畑」からチーム名を改めて2シーズン目。「瀬戸内」として待望の1勝は、常勝への確かな自信となるに違いない。【石川裕士】
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