入国審査　不寛容社会のスリラー

　スペイン人のエレナ（ブルーナ・クッシ）とベネズエラ人のディエゴ（アルベルト・アンマン）のカップルは、移住のために到着したニューヨークで旅券審査を通れず、別室に連れて行かれて質問攻めに遭う。

　高圧的な役人に個人的な事情を事細かく詮索される。反論も質問も許されず、不愉快極まりないが、自分の生殺与奪は相手次第。言い返して気分を害したら元も子もない。尋問の理由は明かされず、屈辱的な扱いに抗議もできない。

　カフカの「城」のような不条理な状況だが、世は移民に対する姿勢を強化するトランプ政権下。2人の受難は誰にでも起きそうな生々しさを持って迫ってくる。権力をかさに着て2人を犯罪者のように扱う役人たちの態度は、不寛容で外来者に冷淡な、トランプの米国の象徴だ。