我々が存在する意義はなんだ? それが誰もわからないから、誰もが惑い、ただ力を求め、いや、本当のところは安心と意味を求めて惑っている。
「僕をこちらに呼んだのは、あなたのミッションのためですね。壁を越えるための」
「さようです。ユミダイよ、これは一種の導通確認です。私が見ているあなた方の世界が果たして本当に存在するのか。存在するとして、そこに物理的に繋(つな)がることが可能なのかどうか、まず私はそれを確かめねばなりませんでした」
導通確認? だとすれば、別に僕でなくともかまわなかったということか。胸が痛みそうになったが、壁博士の眼鏡の奥の眼差(まなざ)しに、そんなことは些事(さじ)だと感じさせられた。
Comments