/435 上田岳弘 倉田悟・絵

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 我々が存在する意義はなんだ? それが誰もわからないから、誰もが惑い、ただ力を求め、いや、本当のところは安心と意味を求めて惑っている。

「僕をこちらに呼んだのは、あなたのミッションのためですね。壁を越えるための」

「さようです。ユミダイよ、これは一種の導通確認です。私が見ているあなた方の世界が果たして本当に存在するのか。存在するとして、そこに物理的に繋(つな)がることが可能なのかどうか、まず私はそれを確かめねばなりませんでした」

 導通確認? だとすれば、別に僕でなくともかまわなかったということか。胸が痛みそうになったが、壁博士の眼鏡の奥の眼差(まなざ)しに、そんなことは些事(さじ)だと感じさせられた。

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