事前研究がもの言う序盤
序盤、互いに飛車先の歩を前進させて攻め合う「相掛かり」は古くからある戦法だ。序盤の駒組みからの変化が多岐にわたるため定跡化は難しいが、コンピューター将棋の開発が進み相掛かりの未開の地が開かれ始めている。図の[先]5八玉で一番多く指されているのは[先]9六歩なのだが、この一手の違いだけで盤面は早くも異次元だ。数手後に合流する可能性もあるが、一手の違いで打ち上げた宇宙探査機が金星に向かうか火星に向かうかくらいの大きな差となってしまうケースも多い。
近年の居飛車党同士の対戦は事前研究が大きい。コンピューター将棋が示す最善手を知っておくことはもちろん大切だが、相手の研究が手薄いと思われる局面に誘導するという実戦的な駆け引きも近年の公式戦の見どころの一つである。過去の実戦例を見ると、近藤は[先]9六歩、[先]6八玉、[先]2四歩、[先]1六歩、そして本譜の[先]5八玉をバランスよく使い分けているのだが、これも対戦相手に自分の球種を絞らせないため…
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