タイ政府は1日、隣国カンボジアとの国境紛争で攻撃を受けた現場を、各国の外交団や海外メディアに公開した。紛争は米国などの仲介で7月29日から停戦が発効したものの、双方の批判合戦は続き、現地では緊迫した雰囲気が漂っていた。
オレンジ、白、緑。日本人にもなじみ深いコンビニエンスストアの看板が、無残にひっくり返っていた。店舗入り口の天井は垂れ下がり、店内の商品はほとんど原形をとどめていない。焼け焦げた陳列棚だけが残り、粉々に砕けたガラスが周囲に散乱していた――。
タイ東北部シーサケート県のガソリンスタンドに併設されたセブンイレブンは、7月24日の攻撃の跡が生々しく残っていた。カンボジアとの国境から約30キロ。カンボジア軍のロケット弾が直撃したとされ、買い物に訪れていた子どもなど地元住民8人が死亡した。
タイ軍と政府の説明によると、今回の衝突では国境沿いの3県に被害が及び、学校や病院なども損壊。多くの住民が避難を余儀なくされた。7月29日の停戦発効後も国境近くの町は人影がまばらで、日常生活が完全には戻っていない様子がうかがえた。
コンビニ店の前では、遺族が写真を手に集まり、静かに被害の実情を訴えていた。
一方、カンボジア政府も7月末、自国側の紛争地を日本を含む各国の駐在武官に公開した。停戦後も双方が相手の合意違反を主張する場面があり、緊張は続いている。
衝突が発生した7月24日以降、双方で死者は民間人を中心に40人超、避難した人も約30万人に上る。【シーサケート国本愛】
Comments