
筑波大病院(茨城県つくば市)は2日、最先端のがん治療を行う陽子線治療センターの新病棟を開所した。加速器や治療装置を一新したほか、全国の大学病院で初めてディズニーとのコラボを実現。小児がんと闘う子どもに治療への親しみを持ってもらうようにした。
陽子線治療は、加速器で加速した陽子(水素イオン)をがん細胞に照射して小さくしたり死滅させたりする治療法だ。体内を透過するX線とは異なり、エネルギーを調節すると、ちょうどがん病巣で陽子が止まる。病巣をピンポイントで狙えるため、他の正常な臓器にほとんどダメージを与えないのが特徴だ。
筑波大では1983年に本格的な陽子線治療の臨床研究を始め、国内で最も長い歴史がある。とくに肝臓がんや前立腺がん、小児がんなどの治療実績が豊富だ。

今回導入した新装置は3代目となる。細い陽子のビームを、がん病巣の形に合わせて3Dプリンターのようにスキャンしながら照射する方法を採用。これまでは太いビームを特殊な器具で病巣の形にそろうように調整して照射していたが、より高い精度で治療できる。
新病棟は4階建てで、投資額は約158億円。加速器や二つの治療室、検査室などを備える。フロアの壁には、ライオンキングやエルサ、アラジンなど、ディズニーアニメのキャラクターがカラフルに描かれ、小児がんの患者がリラックスして治療できるように配慮した。ディズニーが日本国内の病院とコラボするのは5例目という。
筑波大病院では年間500~550人のがん患者の陽子線治療を行い、その約1割が子どもだという。宮本俊男・診療放射線技師は「『治療室に行きたい』と子どもたちに思ってもらうことが治療の第一歩になる」とねらいを話す。【酒造唯】
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