戦前に米国から日本へ親善の証として贈られた「青い目の人形」が、群馬県太田市の市立新田荘歴史資料館で公開されている。展示会「終戦から80年 太田と戦争」の一環。人形は市立韮川小で保管され、市内で現存するのはこの1体のみ。関係者は「人形にも、戦争に翻弄(ほんろう)された物語があることを想像して見てほしい」と話している。
青い目の人形は、1924年に米国で施行された「排日移民法」などによって悪化する日米関係の改善を願い、米国の宣教師の呼びかけで全国の小学校などに約1万3000体が贈られた。韮川小にも届けられ、「メリーちゃん」と名づけられた。
しかし、太平洋戦争が始まると、軍が「敵国製品」として廃棄を命令。多くが処分されたが、当時の韮川小の校長が「人形に罪はない」と戸棚の奥深くに保管して守った。市によると、県内に贈られた142体のうち、現在残っているのは計19体だという。
展示会ではこの他、兵士出征時に寄せ書きした日の丸や、千人針、米爆撃機B29による空襲写真など約40点を展示。同資料館の前沢哲也学芸員(65)は「学校で人形を見たであろう子どもが10年後に出征している。そういう戦争の理不尽さや悲惨さを、若い世代に知ってほしい」と語った。
31日まで。月曜休館。展示会のみの観賞は無料。15日午後2時からは元衆院議員、須永好の日記に書かれた戦時下の太田市について、前沢学芸員が解説する。問い合わせは資料館(0276・52・2215)。【湯浅聖一】
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