欧州中央銀行(ECB)はドイツのフランクフルトで24日開いた定例理事会で、主要政策金利を2024年7月以来8会合ぶりに据え置いた。米トランプ政権の高関税政策による物価や経済への影響を見定めたい考えだが、会合後に記者会見したラガルド総裁は、足元では比較的良好だとも強調。金融市場は秋以降の追加利下げを見込んでいたが、米国と欧州連合(EU)の関税交渉が順調にまとまれば、利下げが「打ち止め」になる可能性も意識され始めた。
「我々は『様子見』をするのに良い場所にいる」。会見で今後の金融政策の見通しを問われたラガルド氏は、こう率直に答えた。
ECBは24日、民間銀行が中銀に資金を預ける際の中銀預金金利は2%、民間銀行が資金を借り入れる際の主要金利も2・15%のまま据え置いた。
24年6月以降の9会合で8回も利下げを重ねたECBが今会合で追加利下げを見送り、8月1日に期限が迫った欧米関税交渉の推移を見守るという展開は、市場の予想通りだった。
ECBには「様子見」をする余裕があった。
EU統計局によると、6月のユーロ圏の消費者物価指数上昇率(前年同月比)は2%とECBの中期目標と一致。減速が懸念されていた経済についても、ラガルド氏は利下げの効果もあり「比較的好ましい形になっている」と手応えを見せた。
市場は9月の次回会合以降に少なくとも1回の追加利下げを見込んでいたが、ラガルド氏の前向きな現状認識を受けて、期待は急速にしぼみつつある。
ただし、トランプ関税という最大の不安要素は残ったままだ。
英フィナンシャル・タイムズ(FT)は、米国がEUに一時通達した「30%」の半分にとどまる15%の相互関税を課すことを中心に、米欧間の交渉が進んでいると報じた。これが市場予想の前提となっている。
しかし、EUは交渉を急ぐとともに決裂時に備えた報復措置も調整中だ。ラガルド氏は、早期解決は「我々を含むすべての経済活動への参加者に歓迎されるだろう」と期待したが、交渉次第で物価や経済が不安定化し、ECBが対応に追われるリスクは消えていない。【ブリュッセル岡大介】
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