長野県内のガソリンの小売価格を巡りカルテルを結んだとして、公正取引委員会は5日までに、県石油商業組合・北信支部の独占禁止法違反(事業者団体による競争制限)を認定し、再発防止を求める排除措置命令を出す方針を固めた。北信支部に加盟する複数のガソリンスタンド(GS)事業者に対し、課徴金の納付も命じる方針。関係者への取材で判明した。
公取委は2月に、独禁法違反の疑いで県石商の本部(長野市)などを立ち入り検査していた。県石商には八つの支部があり、北信支部は長野市や千曲市などの北信地域を管轄し、約70の事業者が加盟している。
関係者によると、北信支部は遅くとも2024年12月以降、ガソリンの店頭表示価格の値上げや値下げの幅、そのタイミングを支部加盟の各事業者に繰り返し伝達し、価格を不正に調整していたとされる。
公取委とは別に、県石商も弁護士らによる第三者委員会を設置し、6月に報告書を公表。北信を含む3支部で店頭表示価格の不正な調整などが行われ、本部が黙認するなど「組織ぐるみと評価せざるを得ない」と指摘した。
不正な調整は月に複数回行われることもあった。具体的には、ENEOSなどの元売りが毎週公表する仕切り価格(卸価格)に「税込み2円以上」といった変動があった場合、北信支部長らは、GSを広域展開している事業者らと協議し、店頭表示価格の変更を調整。結果を他の事業者に伝え、従わない事業者を確認した際は「協力要請」を働きかけていたという。
第三者委は、本部や佐久支部、上伊那支部の不正も指摘したが、公取委の処分は北信支部と一部の事業者にとどまる見込み。一方、阿部守一・長野県知事は7月31日の定例記者会見で県石商について「非常に問題が多い」などと発言し、信頼回復に向けて組織全体の改善を求めている。
長野県のレギュラーガソリン小売価格(1リットル当たり)は、カルテル疑惑の浮上に伴い一時値下がりし、その後は上げ下げを繰り返している。民間のGS専門サイトによると、8月4日現在の価格は180円で、都道府県別の全国平均を10円近く上回り、最高値だった。【山田豊】
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