高校野球・夏の甲子園1回戦(7日)
○津田学園(三重)5―4叡明(埼玉)●
津田学園の佐川竜朗監督は試合後、延長十二回を完投したエース左腕・桑山晄太朗の頑張りを、こんな言葉でたたえた。
「今日、彼は初めて自分の後ろにいる仲間を信頼したんじゃないか。そこに彼の成長が見えましたね」
3イニングのタイブレークを乗り切った末の勝利。桑山にとって、殻を破るピッチングになった。
最速は149キロを誇り、スライダーも曲がり幅や球速に変化をつけて操れる。
ただ、これまでは自分が抑えるという責任感ゆえに、練習で自身の世界に入り込むことがあった。
今夏の三重大会の期間中も調整に専念するのではなく、ウエートトレーニングや走り込みをしてきた。捕手の犬飼悠之介は桑山について「自由人。練習もずっと1人で考えてやっている」と語る。
この試合、三回までは被安打1と上々の立ち上がり。ただ、2巡目以降は「(自身)初めての甲子園で、観客も多くて、普段とは違った」(桑山)。少しずつ高めに浮き始めた球を捉えられた。
ただ、苦しい場面で守備に助けられた。3―3で迎えた延長十回は、併殺と三振で無失点に抑えた。
十一回に1点を失ったが、その裏に味方が追いつくと、「脚のいろいろなところがつりそうだった」。それでも「3年間で最後。気力しかない」と気持ちを入れ直した。
十二回1死一、二塁でも「低めに、コースを間違えないように」。ここも併殺に仕留め、サヨナラ勝ちを呼び込んだ。
試合後、桑山は充実感をにじませながら振り返った。「なかなか試合が決まらない中でも、気持ちは切らさずに、思い切って腕を振って投げました」
そして、続けた。「あとはバックに任せて、信じて、投げました」
言葉に実感がこもっていた。【深野麟之介】
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