「80年代ロボットアニメ」リアル路線なのに「オカルト」的な終わり方が多いのはなぜ?

Date: Category:エンターテインメント Views:2 Comment:0

リアルな「メカ」が活躍も、最後は「謎のエネルギー」によって幕引き?

 アニメ『機動戦士ガンダム』(1979年)の大ヒット以降、ロボットアニメが隆盛を極める時代がやってきました。それまでの作品と比べて複雑なストーリー構成が魅力のひとつでしたが、それが難解な最終回が増えていく要因にもなったのです。

 1980年代以降、ロボットアニメの数が増えていきましたが、どの作品も少なからず『ガンダム』の影響を受けることになりました。製作スタッフやスポンサーといった作り手側としても、無視できない強い影響力があったわけです。

 もっとも、わかりやすいのがロボットの能力をリアルに描くことでしょうか。これにより、後に「リアルロボットアニメ」と呼ばれる作品が増えていきます。これは『ガンダム』放送終了後に一大ブームとなった「ガンプラ」の影響でした。敵側のロボットも販売されることになり、よりリアルな要素が好まれるようになったわけです。

 このリアル化という風潮はストーリーにも影響を与えました。それまでのロボットアニメは単純明快で1話完結が基本です。極端な話、第1話と最終回以外のエピソードは前後しても話が通じるのが普通でした。

 この作風が普通だったロボットアニメに、縦軸というべきストーリー性が鮮明に描かれる作品が増えていったわけです。もちろん従来通りの一話完結で制作された作品もありました。しかし、ストーリー性重視の作品が増えたことは間違いないでしょう。

 こうしたストーリーの複雑化のしわ寄せなのか、難解な最終回を迎えたロボットアニメも少なくありません。特に、大いなる存在、すなわち神や未知なるエネルギーといったものによって物語が終わるという展開が定番のようになりました。

 伝説の無限エネルギー「イデ」によって滅亡を迎えた『伝説巨神イデオン』(1980年)、謎のエネルギー「ビムラー」によって戦いを終息させた『戦国魔神ゴーショーグン』(1981年)、大秘宝「クワスチカ」によって転生エンドを迎えた『魔境伝説アクロバンチ』(1982年)などが、典型的な例でしょうか。

 この他にも『装甲騎兵ボトムズ』(1983年)の異能者「ワイズマン」、『特装機兵ドルバック』(1983年)の邪悪な意識の集合体である「ゼラー」など、リアルな世界観で不思議と精神生命体のような敵が姿を見せています。

 こうしたリアルなドラマに、オカルティックな存在が頻発するのはなぜでしょうか。これには1980年代の空気感のようなものがあったのかもしれません。

『超電磁ロボ コン・バトラーV』の最終回が収録された、「超電磁ロボ コン・バトラーV Vol.5」DVD(東映ビデオ)

紀元前からあった、人類の「創作手法」だった?

 1980年代というと、「世紀末思想」のようなものが流行した点が見逃せません。この当時のアニメ、マンガ、小説といったフィクション作品には少なからず影響を与えていました。当時のフィクションで未来を描くとき、だいたい「198X年」や「199X年」というのが定番だったと思います。

 これには、「1999年7の月…」で有名な「ノストラダムスの大予言」の影響が大きく、当時のTV番組でも特番がよく放送されていました。こうした目に見えない不安のようなものが誰の心にもあったのでしょう。

 そう考えていくと、この「目に見えない不安」を具現化して最終回で戦うラスボスにするという手法は、時代の空気感からすれば無理からぬ配置なのかもしれません。
 ただし、ロボットアニメのメインターゲットである子供たちにとって、この終盤でよくわからない巨大な存在が登場するという展開はわかりづらかったようです。ふんわりとした展開だったと、おぼろげに記憶している人も少なくありません。

 こういった超展開で物語を終えることを「デウス・エクス・マキナ」といいます。物語が解決困難な局面になっても、絶対的な存在によって終息を迎えるという意味になるでしょうか。古代ギリシアからある言葉です。

 このデウス・エクス・マキナによる最終回が多いのが1980年代のロボットアニメの特徴といえるかもしれません。もっともデウス・エクス・マキナが使われたロボットアニメの最終回は1980年代が初めてではありません。デウス・エクス・マキナが使われた代表的な作品といえば、『超電磁ロボ コン・バトラーV』(1976年)を思い出す人も多いことでしょう。

『コン・バトラー』の最終回は、敵の残した核融合弾アースボムによって地球は壊滅の危機を迎え、エネルギーの尽きたコン・バトラーにはどうすることもできませんでした。しかし突如、現れた平和の使者「デウス」が爆弾を止め、各地の戦火を鎮めるなどの奇跡を起こします。

 ちなみに、このデウスの存在は最終回まで特に語られておらず、伏線らしいものもありませんでした。つまり最終回になって唐突に現れた新キャラが物語を解決した稀有な例といえるわけです。

 その名前からデウス・エクス・マキナの影響であることは間違いなく、1980年代の流行に先駆けて使われたということでしょう。この『コン・バトラー』最終回でデウス・エクス・マキナという存在を知った人も少なくなく、アニメファンにはよく知られた手法となりました。

 もっとも1980年代の作品では第1話から積み重ねてきた設定が土台になっているので、唐突感はそれほど感じなかったかもしれません。しかし、劇中の登場人物が翻弄されたという意味では、強大な力による強引なエンディングだったといえるでしょう。

Comments

I want to comment

◎Welcome to participate in the discussion, please express your views and exchange your opinions here.