韓国では大統領の生家は観光地となることが多い。6月に就任した李在明(イジェミョン)大統領の生家の跡地は南東部・慶尚北道の山中、わずか6世帯の限界集落にある。だが、韓国メディアによると、週末は多い日で1000人以上が押し寄せる新たな名所となった。
もう一つ、静かな人気スポットになっているのが李氏の父母と先祖の墓だ。生家跡から車で30分ほどの山中にある。地元住民に場所を尋ねながら、リンゴ畑をくぐり抜け、何とか見つけることができた。
古来、韓国では山の配置や川の流れなど土地の特徴に基づいて、最も縁起のいい場所「明堂」に住宅や墓地などをつくる「風水地理説」が根付いてきた。日本人が想像する以上に風水の影響力は強く、都市計画などで自治体が風水専門家に意見を聞くこともあるほどだ。風水を専門に学ぶ学科を備えた大学も少なくない。そして先祖の墓は、子孫の人生の成功を左右する要素の一つだという考えが根強い。このため大統領に上り詰める人物の先祖の墓に対する関心は高い。
李氏の父母と先祖の墓は、新羅時代から僧侶らが修行をした霊峰「清涼(チョンニャン)山」を正面に見据え、その前を韓国最長の河川・洛東江(ナクトンガン)が流れる理想の明堂だ。李氏は大統領選での当選がほぼ確実視されていたため、投票日直前の5月下旬に記者が訪れた時も、見つけにくい場所であるにもかかわらず、大勢の人が墓に来ていた。風水を学んでいる女性会社員(38)は「大統領になるほどの人物の先祖の墓がどんな特徴を持っているのか詳しく知りたい」と語った。
政治家も少しでも縁起を担ごうという心理が働くのだろう。大統領選の前に候補者が先祖の墓を移す事例は後を絶たない。金大中(キムデジュン)・元大統領は3度の落選後、親の墓を移して4度目の選挙に臨み、当選した。一方、保守系政党から大統領選に出馬して2度敗れた李会昌(イフェチャン)氏は、父と先祖の墓を移したものの、3度目も苦杯をなめた。
今回の大統領選でも当時の与党「国民の力」の予備選に出馬した洪準杓(ホンジュンピョ)氏は、父親の墓を移したと明かしたが、予備選で敗れた。一方、李在明氏は選挙前に墓を移していないが、当選している。風水判断は、いたずらに信じるのではなく、参考程度にするのがいいのかもしれない。
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