原作者から大絶賛された俳優も
人気マンガの実写化作品では、ストーリーだけでなくキャラクターの再現度も評価ポイントです。なかには、無名の状態や映画初出演ながら、ビジュアルや演技力で普通の観客はもちろん、一番厳しい目で見ている原作ファンからも高い評価を得た俳優もいます。
2002年に公開された映画『ピンポン』(原作:松本大洋)は、卓球に青春を捧げる男子高校生たちの挫折や苦悩、努力を描いた作品です。窪塚洋介さんが演じる主人公の「ペコ」こと「星野裕」をはじめ、どの役もハマり役と長年高い評価を受けています。
なかでも、ペコの強敵として立ちはだかる「ドラゴン」こと「風間竜一」を演じた中村獅童さんは、本作出演時ほぼ無名の状態ながら強烈な存在感を放っていました。スキンヘッドに眉毛をすべて剃ったビジュアルはもちろん、威風堂々とした強者としての貫禄や、プレッシャーに苦しむ相反した姿をしっかりと再現しています。
歌舞伎の名門一家に生まれた中村さんですが、当時は歌舞伎と並行してさまざまな作品のオーディションを受けても受からない状態で、何としても世に出たいという思いから頭や眉毛を剃り、原作にビジュアルを寄せたうえでオーディションに挑んだそうです。その意気込みが実を結び、ドラゴン役に選ばれて、日本アカデミー賞、ゴールデン・アロー賞など数々の新人賞を受賞し、ブレイクを果たしました。
そのほか、安藤ゆき先生のマンガが原作の映画『町田くんの世界』では、オーディションで主演に選ばれた細田佳央太さんはもちろん、本作で女優デビューを飾った関水渚さんも高く評価されています。本作は、勉強も運動も苦手ながら人から好かれる「町田一(演:細田佳央太)」が、クラスメイトで人間嫌いを公言する「猪原奈々(演:関水渚)」と出会い、芽生えた感情に向き合う物語です。
当時新人だった関水さんは、細田さんとともに、1000人を超えるオーディションを受けて猪原役に抜擢されました。プロデューサーの北島直明さんは、本作のキャスト発表時に関水さんの選考理由について、「演技経験もテクニックも何もないはずなのに、不思議な魅力というか華やかさというか、とてつもない伸びしろを感じ、彼女に賭けてみようと思いました」と語っています。
実際に、関水さんの初々しい演技は奈々の持つみずみずしい雰囲気や、町田くんと出会って翻弄される姿にぴったり合っていると好評です。関水さんは本作で、第62回ブルーリボン賞新人賞や第93回キネマ旬報ベスト・テン新人女優賞などを受賞しています。
ほかには、2018年に公開された映画『響 -HIBIKI-』(原作:柳本光晴)でも、映画初出演で主演を務めた、平手友梨奈さん(当時、欅坂46所属)がハマり役と話題を呼びました。本作は、類い稀な文才を持つ「鮎喰響(演:平手友梨奈)」と、彼女の才能に翻弄されながら葛藤する人びとの姿を描いた作品です。
響は感性が一般人とかけ離れているうえに、自分の考えを曲げない性格がゆえに周囲と衝突が絶えません。ときには暴力も振るってしまう難しいキャラクターを、平手さんは演じていることを感じさせない自然な芝居で響を表現し、第42回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞しました。
原作者の柳本先生も、キャスト発表時に「『サイレントマジョリティー』(平手さんがセンターの欅坂46のデビューシングル)のPVを見たときから、もし『響』が実写化するなら、主演は平手さんしかいないなと思いました。響の持つ、媚びない、屈しない、信念の人間、そういったイメージとあまりにもピッタリで。なにより、目が」とコメントしています。
公開後は「響がとにかくエキセントリックでカッコいいし、平手友梨奈の演技力には脱帽しかない」「平手友梨奈の圧倒的存在感、感情ゼロの狂気がリアルに怖い。でも目が離せん。『才能が暴力的』ってこういうこと」「問題ありの天才役を演じていて、平手友梨奈さんの魅力を最大限に引き出している」と、とにかく平手さんへの絶賛が相次ぎました。
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