関東一・坂本、空見上げ 亡き両親に活躍誓い東京対決へ 夏の甲子園

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【関東一-創成館】力投する関東一の坂本慎太郎投手=阪神甲子園球場で2025年8月16日、前田梨里子撮影 拡大
【関東一-創成館】力投する関東一の坂本慎太郎投手=阪神甲子園球場で2025年8月16日、前田梨里子撮影

 関東一のエース左腕・坂本慎太郎投手(3年)は、昨年あと一歩で届かなかった全国制覇を果たすために甲子園に戻ってきた。

 天国の両親に優勝を報告するため、19日の準々決勝では15年ぶりの東京対決に臨む。

小学4年生で母亡くし

 坂本投手は小学4年の時、母雪子さん(当時55歳)を亡くした。雪子さんは家族と一緒に車で練習場所まで坂本投手を迎えに来ていたが、車内で1人でいるときに意識を失った。チームメートの保護者が心臓マッサージや自動体外式除細動器(AED)で心肺蘇生を施してくれたが、助からなかった。

 7年後の昨年11月末には父三男さんが脳出血で倒れた。米沢貴光監督から「毎日お見舞いに行って声を掛け続けなさい」と言われた坂本投手は病室に通い続けた。

 姉良子さんに「お父さんと2人にしてほしい」と頼み、手術を受けて眠っている三男さんと2人きりの時間を過ごしたこともあった。しかし、三男さんは12月に帰らぬ人となった。75歳だった。

準優勝後、突然の別れ

夏の甲子園決勝で京都国際に敗れ、応援席にあいさつに向かう関東一の選手たち=阪神甲子園球場で2024年8月23日、吉田航太撮影 拡大
夏の甲子園決勝で京都国際に敗れ、応援席にあいさつに向かう関東一の選手たち=阪神甲子園球場で2024年8月23日、吉田航太撮影

 父が亡くなる4カ月前、坂本投手は2年生ながら関東一の3番打者として甲子園決勝の舞台に立っていた。

 相手は京都国際。ともに初優勝をかけた試合は延長戦にもつれこんだ。

 1点を追う延長十回2死満塁の好機で打席が回ってきたが、西村一毅投手(3年)に三振に打ち取られ敗れた。

 応援に駆けつけた三男さんは「残念だったな。でも、あと1年あるから」と励ましてくれた。「来年も必ず甲子園に連れて行くよ」と答える坂本投手を三男さんはうれしそうに見つめていたという。

 再び、頂点を目指す決意を固めた直後に訪れた父との別れ。

 「突然のことで頭が真っ白になった」

 それでも、息子が野球をする姿を見るのが何よりも好きだった三男さんを思い、坂本投手は「へこたれずに野球をやるだけだ」と自らに言い聞かせた。

 試合のたびに応援に駆けつけてくれる姉と兄の応援を励みに、野球部の寮で暮らしながら練習に打ち込んできた。

創成館戦で相手打者を打ち取り喜ぶ関東一の坂本慎太郎投手=阪神甲子園球場で2025年8月16日、玉城達郎撮影 拡大
創成館戦で相手打者を打ち取り喜ぶ関東一の坂本慎太郎投手=阪神甲子園球場で2025年8月16日、玉城達郎撮影

「二刀流」で2年連続8強入り

 東東京大会では投打の「二刀流」でチームを引っ張った。7試合中4試合で先発し、4完投、自責点2の快投を見せる一方、3番打者として2本塁打を含むチーム最多の15安打を放った。

 「慎太郎ならできる。絶対に諦めるな」

 ピンチの場面では三男さんがかつて掛けてくれた言葉を思い出し、自らを奮い立たせた。

 「絶対に活躍してくるから」

 東東京大会後、両親の墓の前で、そう誓って乗り込んだ甲子園。中越(新潟)との初戦は6安打1失点で完投した。

 創成館(長崎)との3回戦では2点適時打で先制点を挙げ、1点リードの六回から登板した。

 ピンチの場面では空を見上げた。

 「お父さんとお母さんが絶対に見てる。投げないと」

 持ち前の強気な投球で相手打線を無得点に抑え切り、2年連続の8強進出を決めた。

 昨年の雪辱まであと三つ。「いいピッチングやいいバッティングをしてチームが勝つことを目指したい」。見守り続けてくれた両親に、今年こそ笑顔で最高の報告を届けたい。【洪玟香】

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