<4話まで>イ・ジヌク大人の魅力! ダークホース的弁護士人間ドラマ「エスクワイア」

Date: Category:速報 Views:3180 Comment:0

「エスクワイア:弁護士を夢見る弁護士たち」
「エスクワイア:弁護士を夢見る弁護士たち」

 韓国ドラマ「エスクワイア:弁護士を夢見る弁護士たち」(Netflixで配信中)は、現役弁護士が脚本を手掛けたことによる法律描写のリアルさと、タイプの違う2人の弁護士による葛藤と成長を描く人間ドラマが魅力で、予期せぬ“今年のダークホース”になりそうな一作だ(以下、4話までの内容に触れています)。

脚本は現役弁護士、リアルな法律描写

 本作は、大手法律事務所ユルリムを舞台に、自他ともに妥協を許さない訴訟チーム長ユン・ソクフン(イ・ジヌク)と、彼のチームに所属することになった新人弁護士カン・ヒョミン(チョン・チェヨン)の2人が、感情や事情が複雑に絡み合い、一筋縄ではいかない訴訟案件に真摯(しんし)に向き合う姿を描く。

 物語のテンポがよく、第1話の冒頭、入社面接のシーンだけで視聴者を物語へと引き込む。ヒョミンは、読書に夢中で電車を乗り過ごしユルリムの面接に遅刻。面接官であるソクフンから、弁護士は5分単位で料金を請求する仕事でルーズな人は不適格、と厳しい言葉を投げられ退出させられる。

 このわずかなシーンで、ソクフンの仕事に対する厳格な姿勢を示し、ヒョミンが一つのことに夢中になってほかのことが見えない性質が端的に描かれる。そこからさらに、ヒョミンが面接で巻き返すまでが、わずか10分ほどで描かれる。

「エスクワイア:弁護士を夢見る弁護士たち」
「エスクワイア:弁護士を夢見る弁護士たち」

倫理観揺さぶるテーマ

 ちなみに、面接での質問は二つ。

 一つ目の質問は「車にひかれて腕が取れた男性がいる。その取れた腕を持ち出した人に対して男性が返還請求をした際の判決は?」。

 二つ目の質問は「列車の運転手が100人の乗客の命を救うため、線路の切り替えの操作をして1人の整備士の命を奪った行為は、殺人罪に当たるのか?」。

 ヒョミン以外の応募者は“普通”の倫理観に基づき回答するが、彼女だけは法律に沿って回答。さらに、道徳的な行動でも要件を満たしてしまうと犯罪に、逆に道徳的でない行動でも要件が欠ければ犯罪にならないため「法律は完璧ではない」と付け加え、法律家として現実的かつ救済的な視点も提示する。

 彼女の答えは、本作のテーマそのもの。開始12分足らずで、これからソクフンとヒョミンが倫理観や道徳観を揺さぶる訴訟に直面することを予感させる。

「エスクワイア:弁護士を夢見る弁護士たち」
「エスクワイア:弁護士を夢見る弁護士たち」

最強コンビ誕生の予感

 また、主人公2人が優秀で賢いからこそすれ違いが少なく、訴訟を中心にした物語の運びがスムーズでストレスフリー。最初はヒョミンに厳しかったソクフンだが、彼女の仕事への誠実な姿勢を見て認めていく。また、堅物だが人情深い面もあるソクフンのもとで、ヒョミンも成長を遂げていく。お互いにリスペクトが生まれ、第2話の段階で良き師弟関係の片りんを見せており、物語が進むにつれて最強コンビへと変わっていく予感が漂う。

 ソクフン役で大人の魅力を振りまくイ・ジヌクは、「ボイス」シリーズ、「Sweet Home 俺と世界の絶望」シリーズなどで知られ、「イカゲーム」シーズン2、3で病気の娘のためにゲームに参加したギョンソク役も記憶に新しい。

 また、ヒョミン役のチョン・チェヨンは、アイドルグループのDIA、I.O.Iの元メンバー。近年は俳優としての活躍が目覚ましく、「ゴールデンスプーン」「組み立て式家族 僕らの恋の在処」などでヒロインを務めた。

 2人のほか共演には、イ・ハクジュ、チョン・へビン、キム・ガンミン、キム・ヨジンらが名を連ね、演出は「財閥×刑事」「悪鬼」「私の完璧な秘書」とヒット作が続くキム・ジェホン(「悪鬼」「私の完璧な秘書」は共同演出)が担当。

「エスクワイア:弁護士を夢見る弁護士たち」 拡大
「エスクワイア:弁護士を夢見る弁護士たち」

「裁判は勝ち負けじゃない」

 冒頭でも述べたように、脚本は現役弁護士のパク・ミヒョンで、専門性の高さと同時に弁護士が万事を解決することができない現実や、社内政治によるあつれきも描く。

 第2話では、ある男性が病院の高額な医療機器を破損し、病院から賠償請求される。訴訟の過程で徐々に知られざる背景事情が浮かび上がり、単なる損害賠償の話ではないことが明らかになる。

 ソクフンは、裁判で勝つことは厳しいけれど、法廷のなかだけではない戦いがあると赤裸々に語り、「裁判は勝ち負けじゃない、いかに傷を浅くするか」というセリフは、弁護士の現場感覚を映し出す鮮烈な一言だった。

 韓国では近年、現役弁護士が脚本を手掛ける作品が増えており、「グッド・パートナー 離婚のお悩み解決します」(24年、チェ・ユナ脚本)や「瑞草洞<ソチョドン>」(25年、イ・スンヒョン脚本)などが話題に。

「エスクワイア:弁護士を夢見る弁護士たち」
「エスクワイア:弁護士を夢見る弁護士たち」

弁護士4万人時代 韓国のリアル

 ロースクール制度の導入で“弁護士4万人時代”へと突入するとされる韓国では、弁護士の競争が激化。「瑞草洞」は弁護士の日常に注目した内容で、サラリーマンとしての悲哀や現場のリアルを浮き彫りにしていた。

 その点、「エスクワイア」は、第4話までの段階では法律の枠では測り切れない事柄に焦点が当てられており、今後も生まれや家庭環境、それにまつわる社会問題が描かれることになりそう。

 さらに、ソクフンの元妻との関係、ヒョミンの育ってきた環境が少しずつ明かされている。ソクフンは子どもを望んでいなかったはずの元妻との関係に心が癒えていなさそうだし、ヒョミンは離れて育った双子の姉ヒョジュのことで、優秀な両親との関係はいまだほつれたまま。

 法廷ドラマとしての面白さはもちろん、2人の心の再生と成長の物語が最後まで丁寧に描き切れたら、今年最高のドラマの一つになりそうだ。(梅山富美子)

Comments

I want to comment

◎Welcome to participate in the discussion, please express your views and exchange your opinions here.