
石破茂首相が事実上の減反(生産調整)を見直し、増産への転換を表明したコメ政策は、編成作業がスタートした2026年度予算案の焦点の一つだ。予算を増やせば日本の農業は強くなるのか。
農水省「ドライブかける」
「コメの安定供給を実現したい。26年度からやれることはドライブをかけて(積極的に)やっていく」
農林水産省からは意気込む声が聞こえる。農林水産関係の一般会計当初予算は約10年間、2・2兆~2・3兆円規模のほぼ横ばいで推移。国債費などを除いた国の一般歳出に占める農林水産関係の割合は3~4%台で、国家予算に占める割合は米国やドイツと近い水準だ。
一方、日本では販売目的で水稲から麦、大豆などに転作する農家を対象にした手厚い補助金や高関税による産業保護がある。近年は食料安全保障の観点や物価高対応などとして補正予算で約8000億円を計上するなど予算も増えている。
政府は27年度から水田政策を抜本的に見直す方針だが、農水省は農地の集約や大区画化、生産性向上のためのスマート農業技術の導入支援など26年度から着手できる政策について予算措置を手厚く求める方針だ。
令和の米騒動に対応
政府が持続可能な農業のモデルとする大規模化により、昨年からの「令和の米騒動」にも柔軟に対応できたケースも実際にある。
東京都心から電車を乗り継いで2時間半ほどの、千葉県で一番人口の少ない町・神崎町にある農事組合法人「神崎東部」。経営する約100ヘクタールの広大なほ場のうち、通常は約63ヘクタールで主食用米を生産しているが、今年は普段飼料用米を作っている約12ヘクタールも全て主食用米に変えた。
同法人の代表理事、石橋一博さん(56)は「体制が整っていて人員が足りているうちだからできたこと。高齢化や人手不足で、作りたくても作れない農家は多かったと思う」と振り返る。
神崎東部は、利根川流域の水田地帯で、…
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