タイの刑事裁判所は22日、王室を侮辱する発言をしたとして不敬罪に問われたタクシン元首相に無罪を言い渡した。裁判では、2006年のクーデターで失脚したタクシン氏が亡命中の15年に外国メディアのインタビューで発言した内容が争われた。タイメディアによると、裁判所は「発言は明確には国王に言及していない」と判断した。
不敬罪は最大で禁錮15年が科される重罪。タクシン氏の発言は、14年に起きたクーデターを国王の諮問機関である枢密院のメンバーが支持したとする内容で、これが不敬罪にあたるとして起訴された。タクシン氏は無罪を主張し、保釈が認められていた。
今回の事件は無罪が言い渡されたが、タクシン氏は23年8月に15年ぶりに帰国した後に汚職などの罪で実刑判決を受けながら、病気を理由に警察病院に入院し続けた問題でも係争中だ。最高裁判所は9月9日に判断を示す予定で、結果によっては収監される可能性がある。
また、タクシン氏の次女のペートンタン首相も隣国カンボジアとの国境紛争での対応を巡って憲法裁判所から職務停止を命じられ、今月29日に解職の可否が言い渡される。
一連の動きは、失脚後も政治的な影響力を維持してきたタクシン氏や、ペートンタン氏が率いる与党「タイ貢献党」に反発する親軍保守派の揺さぶりとみられる。タクシン派への包囲網は狭まったままで、政治混乱はさらに深まっている。【バンコク武内彩】
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