第107回全国高校野球選手権大会は23日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で日大三(西東京)―沖縄尚学の決勝が行われる。日大三は14年ぶり3度目の優勝を目指す。選抜大会で2度優勝がある沖縄尚学は、勝てば初の夏制覇となる。決勝を前に両校の地元も盛り上がりを見せている。
日大三の地元・東京都町田市や隣接する相模原市ではゆかりのある人々の期待が高まっている。
相模原市中央区のすし店「弥助」には三木有造監督がしばしば訪れる。店主の鈴木一男さん(73)は、選手への差し入れとしていなりずしを作り、帰り際の三木監督に渡すこともある。今年の西東京大会で優勝した時も、お祝いの「太巻き」を贈った。
店内には、小倉全由前監督が「練習は嘘(うそ)をつかない」と信条を書いた色紙が掛けられている。「この言葉を胸に栄冠をつかんでほしい」と鈴木さんは言う。
町田市の中華料理店「品香園」の店主・柳健司さん(65)は、合宿中の寮から来店した大勢の野球部員に、約50食分のラーメンをふるまったことがある。「空になった器を返しながらあいさつする部員たちの姿が印象に残った。優勝を喜ぶ笑顔を見せてほしい」
町田市役所には「目指せ優勝」と書かれた横断幕が掲げられている。30代の女性職員は「毎試合、感動と勇気をもらっています。最後の一球まで全力を尽くし、楽しんでプレーをしてください」とエールを送った。
23日は町田市の学校講堂で生徒らが声援を送るほか、都庁でもパブリックビューイング(PV)が開かれる。小池百合子都知事も甲子園のスタンドで観戦する。
一方、沖縄尚学のある那覇市。学校からすぐ近くでタコスとタコライスの店を営む玉村研一さん(62)は今年の沖縄大会の試合にはすべて足を運んだ。決勝進出を果たし、「選手一人一人が輝いて見える」と目を細める。
神戸市に住んでいた時期があり、2008年の沖縄尚学のセンバツ優勝や、10年の興南の春夏連覇は現地で観戦した。23日は店内のテレビで観戦する予定だが、「試合に集中したい」と臨時休業する。「沖尚にとって初めての夏の甲子園制覇を、ぜひ成し遂げてほしい」と願う。
那覇市内の平和通り商店街ではPVの準備が進む。同商店街の着物販売店で働く宇根恵美子さん(78)は、10年に興南が優勝した決勝では「自然と人が集まってきて、お店の前も歩けないぐらい人でいっぱいになった」と懐かしむ。旧盆などが近く「休む暇がない」と嘆くほどの繁忙期だが、「決勝の時は仕事どころじゃない。みんなで応援したい」と楽しみにしていた。
沖縄から力強い応援団も駆けつけた。日本トランスオーシャン航空(JTA、那覇市)は決勝のために増便し、沖縄県民やファンら約160人を乗せた第1便が22日夜、関西国際空港に到着した。23日朝も特別便を運航する。「うちなー(沖縄)の翼」を掲げるJTAの担当者は「すぐに完売し、沖縄の高校野球に対する熱意を改めて感じた」と話した。
【鮎川耕史、喜屋武真之介、中村宰和】
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