仲間も、身近な存在も驚く成長がチームの躍進につながった。
全国高校野球選手権大会の23日の決勝で日大三(西東京)と対戦する沖縄尚学に、注目の投手がいる。背番号「10」の本格派右腕、新垣有絃(ゆいと)投手(2年)だ。今大会は一塁手で出場している兄の瑞稀(みずき)選手(3年)が、「普段は友達のように仲が良い」という弟について語った。
有絃投手は2回戦の鳴門(徳島)で先発し、5回無失点と好投。準々決勝も先発し、強打の東洋大姫路(兵庫)を6回1失点に抑えた。準決勝の山梨学院戦では六回のピンチで同じ2年生の左腕、末吉良丞投手を救援し、最後まで無失点で封じた。
大会前は最速150キロを誇る末吉投手に注目が集まっていたが、有絃投手は曲がりの大きいスライダーを駆使し、安定感では引けを取らない。直球も、山梨学院戦で146キロを計測するなど、潜在能力の高さを見せている。
「自信を持って自分のピッチングができて、抑えきれていた。とても良かったかなと思います」と、瑞稀選手は山梨学院戦での弟の投球に目を細める。
瑞稀選手自身は背番号「3」を付け、上位打線を任されている。
弟とはいつも一緒だった。父の草野球で一緒に遊び、野球にのめり込んだ。中学まで同じ沖縄のチームでプレーしたが、「高校は違うところに行くんだろうな」と思っていたという。有絃投手は関西の高校への進学がほぼ決まりかけていたからだ。
しかし、自身がいる沖縄尚学の練習に突然参加し、そのまま入部が決まった。「何の相談もなかったので……、びっくりしました」と瑞稀選手。
有絃投手は「比嘉(公也)監督の指導を受けたかった」と言う。
入部当初はまだ球威がなく、比嘉監督も「行儀の良いストレートだった」と笑う。それが投球フォームの試行錯誤などが実り、ぐんぐん成長した。
瑞稀選手は「自覚も出てきて、積極的に練習するようになった」とうなずく。
有絃投手は性格的におとなしく、口数も少ない。それでも「みんなといる時とかは楽しそうにやってます」(瑞稀選手)。
練習中を含め、兄弟間では敬語は使わず、それぞれの学年であった笑い話を共有する。家族で焼き肉を食べるのがたまの楽しみだという。
有絃投手は好投していることに加え、端正な顔立ちだとして話題になっており、瑞稀選手は「(反響は)知っています。自分もイケメンだと思います」とニヤリ。2人で学校初の夏の頂点を取りに行く。【生野貴紀】
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