奈良県内の公立小中学校の一部では、25日から2学期が始まる。夏休み明けは不登校が増える傾向があるが、子どものSOSに気付くために、家庭や学校はどのように対応すればいいのか。奈良教育大ESD・SDGsセンター研究部員で居場所「ねいらく」スクールカウンセラーを務める桜井恵子さんに聞いた。【聞き手・木谷郁佳】
居心地良い、明るい家に
――子どもたちのSOSにはどのようなものがありますか。
◆朝起きにくい、朝食をすぐに食べない、服をすぐ着替えない、前日から眠りが浅い、夏休みの宿題が滞っている、学校の話題を避けるといった傾向があります。子どもは無理をしてでも学校に行きます。行けなくなった時は、本当にしんどく、行き倒れた状態です。親は「少し前までは、1学期には学校に行っていたのだから、すぐに学校に戻せば大丈夫」と思いがちです。しかし、無理に学校に戻しても、子どもは「親は自分の気持ちを分かってくれない」と感じ、親とのつながりを少しずつ切っていきます。
――家庭はどうしたらいいでしょうか。
◆行き渋ったら、子どもの言う通り「行きにくいね。お休みしようか」と声をかける。そうすると子どもは「親は自分の気持ちを分かってくれた」と心が楽になります。
家の中を明るくすることが大切です。家では、子どもが好きなことをできるようにして行動をほめたり、遊びを見守って信頼関係を作ったりして、居心地を良くする。子どものエネルギーがたまるまで待ちましょう。
共働きや一人親の家庭であれば早めに帰宅し、人が少ない夜などにドライブに行って話すといった方法もあります。
――どういう心構えが大事ですか。
コロナ禍以降、学校では楽しい行事が減り、子どもたちは魅力を感じにくくなっています。家は安心で安全だと思ってもらうことが大切です。
そして不登校の原因を聞き出さない。さまざまなストレスがたまった状態なので、控えましょう。本人もよく分かっていなかったり、気持ちが変化したりすることもあります。仮に原因が分かり取り除いても、学校に行けるようになるとは限りません。そのことを理解することが重要です。
――学校側はどう対応したらいいでしょうか。
◆熱心な学校では、毎朝自宅まで迎えに行く先生もいます。ただ、学校に行きたくない子どもにとっては、自宅のピンポンは恐怖でしかありません。家庭訪問で子どもに会えるなら「明日こんな楽しいことをするから来ない?」といった学校の話はしない。仮面ライダーやゲーム、アイドルなど、子どもが好きな話題にする。分からなければ「知らないから教えて」と聞く。長居せず10分前後で切り上げ、子どもに圧をかけない。人とのつながりと心の元気を取り戻すことが大切です。
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