画面に向かって話す壁博士の姿を脇から眺めている内に、話を遮り、疑問をぶつけたい衝動に何度となく駆られた。
ディスプレイの中には、布藤さんと、僕と全く同じに見える男性、それから間宮が映っている。僕がいた元の世界の人々だ。僕と全く同じに見える男性はこちらの世界では、「鳥」と呼ばれていた研究者だろう。
世界の混線があって、鳥と僕だけが入れ替わって、後は何も変わっていない。壁博士は向こうの人々と、こちらにいる彼人(かのひと)と僕に向かって話をしている。
Zoomみたいなソフトで向こうの世界に繋(つな)ぐ前、締め出していた彼人を部屋に招き入れ、これから自分がするつもりのことを壁博士は僕たちに説明した。説明とはいってもざっくりとしたもので、ただ、Fudo−OSの入った量子コンピュータで、もともと僕がいた世界に接続して、向こうにいるメンバーと一緒に自分の話すことを大人しく聞いていてほしいといった程度のことだ。
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