戦時中の1942年に落盤による大規模水没事故で、朝鮮半島出身の労働者を含む計183人が死亡した山口県宇部市の海底炭鉱「長生(ちょうせい)炭鉱」で25、26日に収容された骨のようなものについて、山口県警は27日、鑑定の結果、いずれも人骨と判明したと発表した。事故犠牲者の遺骨の可能性がある。
長生炭鉱では地元の市民団体「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」(刻む会)の依頼を受けた韓国人ダイバーが25、26両日、陸から約300メートル先の海面に突き出した「ピーヤ」と呼ばれる排気・排水用の円筒から坑道内の潜水調査を実施。25日に側道から主坑道に突き当たった水深43メートルの丁字路付近で3本の骨のようなものを発見して収容し、26日には近くで頭蓋(ずがい)骨とみられるものを収容した。
県警によると、いずれも人骨で、25日に収容されたのは左大腿(だいたい)骨(太ももの骨)、左上腕骨(腕の骨)、左橈骨(とうこつ)(同)、26日に収容されたのは頭蓋骨と判明した。
刻む会によると、韓国政府と刻む会が一部の犠牲者遺族のDNAのデータを保有している。刻む会はDNA鑑定で照合して身元を特定したい考えで、国に実施を働きかける方針。
刻む会の井上洋子共同代表は「全部が人骨と証明された。まだ海底にはたくさんのご遺骨がある。あの方たちをどう救い出すのか。ご遺骨があることを市民の力で分からせた。日本政府はどう責任を取るのか。韓国政府もDNAデータを持っている。我々も協力しながら(身元の特定を)進めたい」としている。
長生炭鉱は宇部市の床波海岸にあり、32年ごろから民間企業が本格操業を開始。太平洋戦争開戦から約2カ月後の42年2月3日、坑口から約1キロ沖合で落盤による水没事故が発生し、朝鮮半島出身の労働者136人を含む計183人が死亡した。【小澤優奈、綿貫洋】
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