千葉県の熊谷俊人知事は28日、銚子市沖などの洋上風力発電所事業から撤退を表明した三菱商事の中西勝也社長と県庁で面談し、「県も地元も振り回された」と述べた。国策事業がもたらす経済効果を期待し、計画の実現に奔走してきただけに、怒りが収まらない様子だ。
面談冒頭のみ報道陣に公開され、中西氏は地元の期待を裏切ったことについて「申し訳ない」と頭を下げた。地域活性化に引き続き取り組む意向を示したが、具体策は示さなかった。
三菱商事などの企業連合は、銚子市の沖合に高さ約250メートル、出力1・3万キロワットの風車31基の建設を計画し、2028年の運転開始を目指していた。しかし、今月27日に建設費高騰を理由に撤退を表明した。
県は、地元企業が風力発電施設の関連部品や工事を受注することで、雇用が創出され、地域経済が潤うことを期待していた。また、事業費48億円をかけ、発電所のメンテナンス拠点となる港の防波堤などを整備してきた。
熊谷氏は面談後、報道陣の取材に対し、「地元も含めて納得はできない」と厳しい表情で語った。事業の実現に向けて港湾の整備事業を続けつつ、国に早期の事業者再公募を求める考えを示した。
一方、企業連合は「地域共生」を名目に、銚子市と旭市、県が設置する漁業関係の基金に約118億円を拠出することになっていた。既にその一部が渡っており、漁船の燃料代の補助などに充てられていた。
ただ、銚子市の担当者は「拠出は今後打ち切られる」と話す。同市は洋上風力の運転開始で20年間にわたり総額26億円の固定資産税も見込んでいたが、これも現時点で見通せなくなった。【中村聡也】
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