第96回都市対抗野球大会(28日・東京ドーム)
○大阪市・NTT西日本2―1横浜市・三菱重工East●
大きな放物線が左翼へと伸びていった。0―0の九回1死一塁、大阪市の7番・北條史也が放った決勝2ラン。プロ野球・阪神でも活躍した殊勲者は「よくてフェンス直撃かなと思っていた。たまたまです」とはにかんだ。
打線は横浜市の投手陣からあと一本が出ずに苦しんでいた。「なかなか均衡が破れなかった。仕掛けていくしかない」と大阪市の河本泰浩監督。八回には盗塁をたびたび仕掛け、試合を動かそうと試みた。
九回の北條へのサインもヒットエンドラン。代わったばかりの速球派・野中太陽に対し、河本監督は「スピードボールを大振りすると捉えられない」と考えた。
これに北條が応えた。2ボール1ストライクから、浮いた変化球をコンパクトなスイングで引っ張った。「(上から)たたこうと思って」。そんな思惑で最上級の結果を出した。
都市対抗大会での東京ドーム通算2100本塁打のメモリアルな一発は、チームにとっても大きな得点になった。
北條は社会人入りして2年目。自チームの三菱重工Westは予選で敗退したが、昨年も東京ドームで活躍した勝負強さを買われて補強選手に選ばれた。
社会人野球の水にも慣れてきた。本塁打の場面もダイヤモンドを走っていたから、スタンドインの瞬間は見ていない。脚がつっていたといい、全力疾走はできなかったが、一球に懸ける思いを体現した。
チームが掲げるテーマは「ポジティブ」。失敗があっても下を向かず、前を向き続ける姿勢を大事にする。この試合、盗塁失敗やミスもあったが、積極策を繰り出し続けた。
「みんないつも通り、ポジティブにやってくれた」と河本監督。やるべきことを貫いた先に、前回王者からの白星が待っていた。【石川裕士】
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