英仏独が対イラン制裁、復活措置の発動を通知 核合意崩壊の危機

Date: Category:速報 Views:2824 Comment:0

イラン国旗=真野森作撮影 拡大
イラン国旗=真野森作撮影

 イラン核合意の当事国である英国、フランス、ドイツの3カ国は28日、イランのウラン濃縮活動などが合意違反に当たるとして、国連安全保障理事会による対イラン制裁の復活に向けた措置を発動すると安保理に通知した。複数の米欧メディアが報じた。イランに圧力をかけ、核協議を進展させる狙いがあるが、通知後30日間の審議期間に英仏独が翻意するだけの進展がなければ、制裁が復活することになる。イランの反発は必至で、イランの核開発を制限する「歴史的合意」は崩壊の危機に直面している。

 イラン核合意は2015年、安保理の常任理事国(米英仏中露)とドイツ、イランとの間で結ばれた。イランが核開発を制限する代わりに、国連や米欧の制裁を緩和するのが柱だった。当事国が相手の合意違反を理由に制裁を復活させる「スナップバック」と呼ばれる措置も盛り込まれていた。

 しかし、17年に発足した第1次トランプ政権は対イラン強硬姿勢をとり、18年に核合意から一方的に離脱した。イランは米国による制裁復活に反発し、段階的に合意から逸脱する措置をとり、高濃縮ウランの生産も再開した。

 英仏独は制裁を復活させた米国には同調せず、中露と共に合意の枠組みを維持。核合意を立て直すため、米国とイランの双方に働きかけを続けてきた。

 今年1月に発足した第2次トランプ政権はイランとの新たな合意を目指し、4~5月に5度の協議を開いた。しかし、交渉が停滞する一方で、イランのウラン濃縮が核兵器に転用可能なレベルに近づいていることに米欧は危機感を募らせていた。

イラン核合意の当事国の構図 拡大
イラン核合意の当事国の構図

 イランを脅威とみなすイスラエルと米国が今年6月にイラン核施設への攻撃に踏み切り、主要なウラン濃縮施設などが被害を受けた。ただ、被害の実態は明らかになっておらず、イランが高濃縮ウランや設備を他の場所に移したり、地下施設が稼働可能な状態で残ったりしている可能性も指摘されている。

 一連の攻撃後、英仏独はイランと独自に核協議を開いたほか、米国との協議を進展させるようにイランに促したが、交渉は停滞している。スナップバックは今年10月18日までに発動しなければ無効になることもあり、英仏独は8月8日付の書簡で「8月末までに十分な解決策に至らなければ、スナップバックを発動させる準備がある」と警告していた。

 安保理では英仏独の通知を受けて、「対イラン制裁の解除継続」の是非を問う決議案が議論される。イランと友好関係にあるロシアや中国は制裁解除の継続を求める可能性がある。しかし、常任理事国として拒否権を持つ英仏が同意しなければ、制裁が復活することになる。【ブリュッセル宮川裕章】

Comments

I want to comment

◎Welcome to participate in the discussion, please express your views and exchange your opinions here.