悩める透明人間

悩める透明人間

 先日、とある店でレジに並んでいると、若い男性が目の前に割り込んできて「またか」と思った。「最近の若者ときたら」と文句を言いたいわけではない。どうも筆者は割り込まれやすい体質らしく、数十年前から何度もあちこちで割り込まれている。あまりに頻繁なので、ある時期から「もしや相手には、私の存在自体が見えていないのでは?」と考えるようになった...
愛はステロイド

愛はステロイド

 1989年、米ニューメキシコ。田舎町のトレーニングジムで働き、退屈な日々を送っているルー(クリステン・スチュワート)は、ボディービルダーのジャッキー(ケイティ・オブライアン)と出会う。運命的にひかれ合い、体を重ねる二人だが、銃の密輸業という裏の顔を持つルーの父親(エド・ハリス)や、夫からドメスティックバイオレンスを受けているルーの...
/164 辻村深月 画 佐伯佳美

/164 辻村深月 画 佐伯佳美

 山本は、部屋がキレイの一点でオレの仕事ぶりを過信しすぎだろ――と思ったけど、思いながらも、胸にあたたかい喜びが広がるのを止められなかった。  介護士の筆記試験は落ちてしまったし、これからだって受かるかわからない。だけど、経験年数を評価してもらえた。人柄をよく言ってくれる人がいた。自分の仕事ぶりに価値を見いだしてくれる人がいた。...
マルティネス

マルティネス

 メキシコで暮らすチリ人のマルティネス(フランシスコ・レジェス)は偏屈な人間嫌いの高年男性。会計事務所の仕事やプール通いなどルーティンは崩さない。ある日、会社から退職をほのめかされ、後任のパブロがやって来る。一方、同じアパートの住人で孤独死した同年代の女性アマリアの私物に、自分への贈り物が残されていたことを知り、彼女の日記や手紙、写...
ユニバーサル・ランゲージ 素朴なぬくもりと詩情

ユニバーサル・ランゲージ 素朴なぬくもりと詩情

 なぜかペルシャ語とフランス語が公用語になっている架空のカナダ・ウィニペグを舞台にしたインディーズ映画だ。七面鳥にメガネを奪われた友だちのために、氷の中のお札を手に入れようと奮闘する幼い姉妹ネギンとナスゴル。地元の観光スポットをめぐるツアーガイドのマスード。仕事を辞めて、疎遠の母親を捜すマシュー。そんな三つのエピソードが一つに収束し...
海辺へ行く道 見れば元気に 芸術賛歌

海辺へ行く道 見れば元気に 芸術賛歌

 三好銀のマンガを、横浜聡子監督が映画化。「ウルトラミラクルラブストーリー」「俳優 亀岡拓次」など、はみ出し気味の人たちに愛情深いまなざしを注いできた横浜監督と三好マンガの世界が溶け合って、ほんわかとしてシュール、厳しいけれど温かい、味わいある佳品となった。  映画の舞台は、アーティスト移住歓迎を掲げる海辺の「汐鳴市」。美術部の活動...