来春から高校野球に指名打者制(DH制)が取り入れられることになった。日本高校野球連盟は1日、2026年度からのDH制導入を決めた。現場の指導者からは好意的な反応が多くを占める一方、新たな懸念が生まれるとの声も聞かれる。
DH制を巡っては今年1月に日本高野連が導入を検討する方針を示していた。従来より1人多く起用できることで選手の出場機会の増加につながり、酷暑対策や投手の負担軽減にも効果的な手段になるとして、指導者からは歓迎する声が多く上がっていた。
DH制で実施されたU18(18歳以下)ワールドカップ(W杯)で日本代表を指揮したことのある明徳義塾(高知)の馬淵史郎監督は「一人でも多くが試合に出場できるし、高校野球も以前からDH制にした方が良いと思っていた。投手の負担も軽くできる。夏場の試合で長打を打ったピッチャーがタッチアウトになり、すぐにマウンドに行くのは酷だなと感じていた」と賛成の立場だ。
チーム側は、DH制を使用するか使用しないかを自由に選択できる。
馬淵監督は「採用するしないはチームの自由なので選択肢が増える。過去を振り返るとDHがあれば起用したかったという選手はたくさんいるし、うちに打撃が良い投手がいればDHは使わないかもしれない」とイメージする。
米大リーグで投打「二刀流」で活躍する大谷翔平選手(ドジャース)の母校で、今夏の甲子園大会に出場する花巻東(岩手)の佐々木洋監督も「安全面や出場機会、生徒の個性を生かすという教育的な配慮から見ても、すべての面で素晴らしいこと」と評価する。
その上で「守備が苦手で打撃の良い生徒もいる。DHの選手が足が速くなければ、代走の選手が従来よりも貴重になるかもしれない」とDH制がもたらす影響を挙げる。
ただ、選手層の薄いチームにとっては戦力差が広がるという懸念もある。
さらに、大垣日大(岐阜)の高橋正明監督は「高校生にはいろんな可能性がある。打つ、投げるに特化してしまわないか。守備練習をしない子が出てくるかもしれない。それが選手の可能性を閉ざしてしまうことにつながるかもしれない」と危惧する。【長宗拓弥、深野麟之介、黒詰拓也】
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