奈良県奈良市の平城宮跡の南にある工場跡地で、環境省レッドリストの絶滅危惧Ⅱ類(絶滅の危険が増している)に指定されているコアジサシの営巣が今夏も確認された。奈良教育大・自然環境教育センターの岡口晃子研究部員が観察を続けており、この場所での営巣は6年連続。巣の数から卵は26個と推測され、23羽が巣立った。巣立ち成功率は88%と極めて高かった。国内では10%に届かない所も多いという。
コアジサシは4月ごろに東南アジアなどから飛来するカモメ科の渡り鳥で、河川敷や砂浜などでひなを育てる。10月ごろ、越冬のため南に渡る。
工場跡地では4月17日に近くの水上池で飛来を初めて確認。5月11日に抱卵を始め、6月2日に最初の雛が孵化(ふか)した。7月23日にここで生まれた23羽が無事飛び立った。
コアジサシは海浜や河川敷などの見通しの良い場所でひなを育てる。こうした自然環境は全国的に減少しており、工場跡地などで営巣が見られるようになったという。
平城宮跡南の工場跡地は、白っぽい砂れき地で見通しが良く、周辺の池で餌の魚が捕れることから営巣に適している。捕食者の少なさや人的かく乱がなく、大雨の被害もなかったことが幸いした。神戸の海浜公園ではキツネに襲われてひなが全滅したことがある。大阪市の夢洲でもかつて豪雨でひなや卵が流された。
岡口さんは「身近な都市公園予定地で絶滅危惧種のコアジサシが高い繁殖成功率をあげていることを多くの人に知ってもらいたい」と話している。【大川泰弘】
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