米国による原爆投下から80回目の「原爆の日」を迎えた6日、広島市中区の平和記念公園で平和記念式典が開かれた。松井一実市長は平和宣言で、軍備増強の動きが世界中で加速し、核兵器の保有を肯定する考え方が強まりつつある現状に懸念を示した。その上で、「核兵器廃絶への思いを市民社会の総意にしていかなければならない」と訴えた。
世界で戦争や紛争が相次ぎ、社会の分断が深刻化する中、松井市長はトランプ米大統領の「米国第一主義」を念頭に、「国家は自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」と強調。各国首脳に対し、「核兵器を含む軍事力の強化を進める国こそ、核兵器に依存しないための建設的な議論をする責任があるのではないか」と述べ、広島を訪れ被爆の実相を確かめるよう呼びかけた。
日本政府には、来年開催される核兵器禁止条約の第1回再検討会議へのオブザーバー参加を要請。また平均年齢が86歳を超えた被爆者の支援策を充実するよう求めた。
石破茂首相はあいさつで、非核三原則を堅持すると改めて表明。「『核兵器のない世界』に向けた国際社会の取り組みを主導することは、唯一の戦争被爆国である我が国の使命」と述べた。今年も核兵器禁止条約には言及しなかった。
国連のグテレス事務総長は「世界は広島の復興の力と、被爆者の活動と知恵を未来への糧とすべきだ」としたうえで、「核兵器の脅威を根絶するためには、核兵器そのものをなくさなければならない」などとするメッセージを寄せた。国連軍縮担当上級代表の中満泉事務次長が代読した。
松井市長と遺族代表が、この1年間で死亡が確認された4940人の名前を記した原爆死没者名簿を原爆慰霊碑下の奉安箱に納めた。名簿の記載人数は計34万9246人となった。
式典には過去最多の120カ国・地域と欧州連合(EU)代表部が参列した。広島市は今年から、各国政府代表を「招待」する従来の方法から「通知」する形に変更し、196カ国・地域とEUに案内文を送付。パレスチナや台湾など計4カ国・地域が初参列した。
昨年までウクライナ侵攻を理由に招待していなかったロシアとベラルーシにも案内を通知した。ロシアは欠席したが、ベラルーシは4年ぶりに参列し、ウクライナも2年ぶりに参列した。ロシア以外の核保有5大国では中国が欠席し、米国、英国、フランスは参列した。【安徳祐】
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