東欧の旧ソ連構成国モルドバで9月28日に予定されている議会選(1院制、定数101)を巡り、親欧米派の現政権と、親露派を支えて影響力を取り戻したいロシアとの間で緊張が高まっている。サンドゥ大統領はロシアによる選挙干渉をけん制する一方、露側は親露派地域の指導者が弾圧されていると批判。つばぜり合いが激しくなっている。
「ロシアは前例のない選挙干渉の準備をしている」。ロイター通信などによると、サンドゥ大統領は7月30日、首都キシナウで記者会見し、ロシアを名指しで非難した。今回の議会選を巡り、偽情報やサイバー攻撃、買収などの懸念があるという。
サンドゥ氏は昨年10~11月にあった大統領選で再選を果たした。ただ、モルドバ当局は、直前の9月にロシアが1500万ドル(約22億円)を投じて有権者13万人を買収したと指摘している。ロシア側は一貫して選挙介入を否定しているものの、モルドバ側の懸念は高まっている。
一方、歴史的に親露派が多い南部ガガウズ自治区を巡っても対立が深まっている。
キシナウの裁判所は8月5日、ガガウズ自治区トップで、サンドゥ政権と対立してきたグツル首長に対し、後ろ盾となっている親露派の政治家イラン・ショル氏(現在はロシアに亡命中)が率いる政党のためにロシアから組織的に資金を持ち込んだとして、禁錮7年の判決を言い渡した。
ロシアのペスコフ大統領報道官は5日、判決について「政治的な動機による決定だ」と批判し、無罪を主張するグツル氏を支持する姿勢を鮮明にした。グツル氏側は控訴する方針だ。
モルドバは隣国ウクライナとの国境沿いに親露派勢力が実効支配してロシア軍も駐留する地域「沿ドニエストル」を抱え、地政学上の要衝とされる。サンドゥ現政権は欧州連合(EU)加盟を目指している。【ブリュッセル岡大介】
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