北九州市若松区沖の響灘で、洋上風力発電所「北九州響灘洋上ウインドファーム」の建設が佳境を迎えている。風車のブレードと呼ばれる羽根の直径は174メートルと国内最大。その迫力を間近で感じようと4日、事業主体の企業連合「ひびきウインドエナジー」に参加している電源開発が開いた洋上の報道関係者向け現地見学会に参加した。
チャーター船で小倉港を出発して約40分。海面から真っすぐと突き出るように立つ複数の風車が見えてきた。一部は試運転のためゆっくりと羽根を回している。海面から羽根の先端までの高さは約200メートルと50階建てのビルに相当。間近で見上げるとその高さに圧倒された。
風車はデンマーク・ベスタス製で、タワーとナセル(機械室)、羽根の各部品で構成。風速3メートルから発電でき、設備容量は9600キロワット。水深約8~30メートルの海底にあらかじめ据え付けられた基礎の上に立つ着床式で設置されている。近くを航行する船や航空機からの視認性を高めるため黄色く塗られた基礎は、月面着陸船のようにも見える。日鉄エンジニアリング若松工場で製造された「地元製」だ。
風車本体は、響灘地区の基地港湾からSEP船と呼ばれるクレーンを備えた専用台船に部品のまま乗せて現地で組み立て、送電用の海底ケーブルを接続して完成する。この日朝、全25基のうち18基目の風車が設置されたばかり。そばにはSEP船があり、波の影響を受けずに作業できるよう4本の脚で船体を海上に完全に浮かした独特の構造を確認できた。設置は9月までに完了する予定だ。
見学会でひびきウインドエナジーの笠原覚建設所長は「設計、施工は複雑な地形や地質に対応し、課題をクリアしてきた。計画に沿って安全第一で工事を進めていきたい」と話した。
チャーター船で移動中、風車6本がほぼ直線上に並んで見える場所があった。北九州市による事業者選定を取材した17年当時、計画に過ぎなかった事業が実現へと向かっていることを実感した。
響灘洋上ウインドファームの最大出力は22万キロワットで、年間発電量約5億キロワット時を見込み、完成時点で国内最大。2025年度の運転開始を予定している。事業費は約1700億円。【石田宗久】
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