「窓はふさがれ心も闇」(並木千柳)
就寝前にベッドの中で「ゲド戦記」シリーズを少しずつ読んでいる。今は、全7巻のうち、3巻を読み終えようとしているところだが、この長編ファンタジー小説は敵との戦いよりも、主人公たちの内面の葛藤に重きが置かれている。偉大な魔法使いであるゲドは己の心の光と闇に真摯(しんし)に向かい合う。そこに人間の真の強さを見る思いがする。
光と闇といえば浄瑠璃「双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)」の第八(俗に「引窓(ひきまど)」)を思い出す。八幡の里に住む一組の家族の物語だ。老母にはこの家に嫁ぐ前に、五つの時に養子に出した息子・長五郎がいる。今は、亡夫と先妻の子である与兵衛とその妻の3人で暮らしている。そこに、実の子・長五郎がひょっこり訪ねてくる。彼は人を殺(あや)めてしまい今は追われる身。しかも義理の息子・与兵衛は…
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