ベンチ入りは「部員投票」で 初出場の綾羽、団結力の鍵 夏の甲子園

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紅白戦でベンチから声がけする綾羽の選手たち=滋賀県栗東市下戸山の野球部グラウンドで2025年8月5日午前10時39分、礒野健一撮影 拡大
紅白戦でベンチから声がけする綾羽の選手たち=滋賀県栗東市下戸山の野球部グラウンドで2025年8月5日午前10時39分、礒野健一撮影

 第107回全国高校野球選手権大会に初出場し、1回戦で高知中央と対戦する滋賀県代表・綾羽の甲子園ベンチ入りメンバーは、背番号も含め県大会と同じ選手が登録された。決めたのは監督ではない。県大会後、「甲子園では誰がどの背番号を付けるのがふさわしいか」を全部員が投票した結果だ。この「部員投票」が団結力を育み、春夏通じて初の甲子園切符につながった。【礒野健一】

全員の前でPR

 部員投票は昨秋の県大会から始まり、以降は県大会前の恒例行事となった。きっかけは千代純平監督(36)の方針転換。「以前から『背番号を付ける選手は、他の選手からの信頼を大事にしなさい』と言ってきた。なのに、私の判断だけで背番号を決めるのは違う」

 まずはベンチ入りを希望する選手が1番から20番まで付けたい背番号で立候補し、全部員の前で意気込みや理由を発表する。それを聞いた上で、各背番号にふさわしいと思う20人を記入し無記名投票する。二桁番号も含めて最も得票数の多かった選手がその背番号をつける。

 「なかなかシビアですよ」と千代監督。「私が背番号を決めれば、ベンチを外れたとしても『見る目がない』と人のせいにできるが、投票結果は後輩も含めた全部員の判断。練習姿勢や生活態度も全て評価対象になる。技術は大切だが、それだけでは背番号は与えられない」と説明する。

千代純平監督の指示を聞く綾羽の選手たち=滋賀県栗東市下戸山の野球部グラウンドで2025年8月5日午前10時41分、礒野健一撮影 拡大
千代純平監督の指示を聞く綾羽の選手たち=滋賀県栗東市下戸山の野球部グラウンドで2025年8月5日午前10時41分、礒野健一撮影

エースへの道

 甲子園でエースナンバー「1」を付ける藤田陸空(3年)は、昨秋は「まだ自分には足らないものが多い」と18番で立候補し、その番号でベンチ入りした。冬の猛練習で手応えを得た春季大会は1番で立候補したがかなわず、再び18番。千代監督に「エースとはどういうものか、自分なりに考えてみろ」と言われ、「チームを鼓舞する存在」との答えに行き着いた。ピンチでも動揺を顔に出さず、闘志を前面に出して打者に向かう姿。藤田は「自分の性格はそうではないけど、それが僕の理想のエース像。ならば、それになり切ろう」と練習試合から取り組んできた。その姿に頼もしさを感じた部員たちは、夏の県大会前の投票で藤田をエースと認め、藤田もそれに応える活躍を見せた。

練習後、リラックスした表情でストレッチをする綾羽の選手たち=滋賀県栗東市下戸山の野球部グラウンドで2025年8月5日午後0時1分、礒野健一撮影 拡大
練習後、リラックスした表情でストレッチをする綾羽の選手たち=滋賀県栗東市下戸山の野球部グラウンドで2025年8月5日午後0時1分、礒野健一撮影

自分を客観的に

 千代監督は「自分の実力を客観的に見つめることで、何が足りず、何をすべきか分かり、成長につながる」と効果を語る。投票した部員たちにも「自分が託した」という思いが生まれ、それがチーム全体の団結力につながっている。今夏、19番で初めてベンチ入りした川北涼(2年)は「春は『手を挙げなきゃ損』という気持ちで立候補したら、やはり選ばれなかった。夏は練習試合の実績もあり『任せられたイニングは必ず0点に抑える』と自信を持って発表できた」と振り返る。そうして獲得した背番号は「うれしいと同時に、出られなかった人の気持ちの重みも感じる。川北を選んで良かったと思わせる活躍をしてみせる」と誓った。

 主将の北川陽聖(3年)は「野球のプレーはもちろん、普段の生活態度もしっかりしようという自覚が芽生えた。選ばれた責任も感じ、それに応えようという力も湧いてくる」と意気込む。仲間から「あいつなら任せられる」と夢を託された20人が聖地でチームの新たな歴史を刻む。

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