熱中症だけじゃない猛暑のリスク メンタルや老化、妊婦にも影響?

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猛暑日を記録する中、日傘を差してベンチで休む女性=東京都千代田区で2025年7月7日午後0時46分、平川義之撮影 拡大
猛暑日を記録する中、日傘を差してベンチで休む女性=東京都千代田区で2025年7月7日午後0時46分、平川義之撮影

 立秋を迎えても猛暑が続いている。熱中症への警戒が呼びかけられるが、健康への影響は他にもある。私たちの体をむしばむだけでなく、胎児にまでも及びかねない暑さのリスクとは。

 総務省消防庁によると、5月1日~8月3日の熱中症による救急搬送者数は6万2633人に上り、前年同時期に比べ3828人増えている。今年の同時期の死者数は80人に達するなど、暑さによる大きな影響が出ている。

 英医学誌ランセットの2024年の報告書によると、気温の上昇と高齢化により、23年の暑さに関連した65歳以上の死者数は1990年代の1・67倍だった。「暑さにさらされることは身体活動や睡眠の質にますます影響を与え、さらに心身の健康にも作用する」と指摘している。

心血管疾患、メンタルにも影響

 具体的にどういう影響が考えられるのか。

 身体に大きな負担を与えるのが、心血管系への影響によるものだ。米国の研究者は23年10月、暑熱によって心血管疾患が大きく増加するとの試算を報告した。

 体を冷やすために発汗しようとすると、心臓は激しく働く必要がある。高齢者など脳卒中や心筋梗塞(こうそく)のリスクが高い人にとっては、この心臓の働きが過剰に負担になって発症を誘引すると考えられるという。

 メンタルヘルスへの影響もある。米心理学会によると、暑さはイライラや衝動、集中力の低下を引き起こす。

 米研究チームが22年に発表した論文によると、同国内では10~19年、猛暑の日に精神疾患に関連する救急外来の受診率が上がっていた。睡眠不足や日中のイライラに伴うと考えられる、自傷行為や不安障害などがみられたという。特にエアコンなどが普及していないとみられる地域は受診率が高く、精神面に悪影響が及ぶ可能性が示唆されたという。

老化進む可能性も

 暑さが老化を進める可能性も分かってきた。米研究チームは25年2月、高齢者の実年齢でなく、組織や細胞の状態に基づく「体の年齢」を血液から測定し、気温との関連を調べた論文を発表した。猛暑の日が増えると体の年齢も増えることが明らかになったという。暑さが続くことで身体機能の劣化が蓄積し、老化が加速する可能性があるとする。

 日本からは妊婦への悪影響を指摘する研究も発表された。東京科学大のチームは5月、猛暑の翌日に胎盤早期剥離のリスクが1・23倍に増えるとの結果を報告した。妊産婦の死亡や赤ちゃんの脳性まひなどにつながる緊急性の高い合併症だ。

 特に妊娠高血圧症の妊婦や、胎児の発育が不良の場合にこの傾向は強かった。脱水などによって胎盤への血流が減ることが要因と考えられるという。

 寺田周平助教(公衆衛生学)は「妊婦も高齢者や子どもと同様に、暑さによるさまざまな健康被害を受けやすい集団と言える。十分な水分摂取や外出時間の見直しなどを徹底してほしい」と話す。【渡辺諒、寺町六花】

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