
9日から最長9連休となる今年の「お盆休み」。帰省やレジャーなどで、自宅を留守にするケースも多いだろう。
<外出時に使用する鍵は『複製キー』にすることを推奨しています>
一般社団法人「カギの110番・カギの救急車」は7月下旬、X(ツイッター)にこう投稿した。
職場の同僚女性の鍵を撮影し、鍵に刻印された番号をもとに合鍵を作って女性の自宅に侵入するなどした疑いで男性が逮捕されたとの報道を引用し、発信したものだ。「複製キー」の利用を勧める理由とは――。
警察庁によると、2024年の一戸建て住宅の侵入窃盗の認知件数は1万2475件。侵入手段別では、施錠していない「無締まり」が47・6%と最多で、「ガラス破り」「ドア錠破り」と続いた。
一方、共同住宅(3階建て以下)は認知件数が2909件で、「無締まり」「ガラス破り」の順に多かったが、3位は「合鍵」だった。共同住宅(4階建て以上)では認知件数が1578件で、「無締まり」に続き2位が「合鍵」となった。
「カギの110番・カギの救急車」が出資する「ジェイクライプ」の防犯設備士、島津高広さん(44)は「鍵のメーカー名と鍵番号が分かれば、インターネットで合鍵を注文できてしまいます。鍵番号を見られないよう対策が必要です」と指摘する。

全国のグループ店では不正防止のため、鍵番号のみや写真のみでの依頼は断っており、店舗に鍵の現物を持っていく必要がある。だが、インターネット上には鍵番号などで注文できてしまうサービスもあるという。
鍵番号はどのように知られてしまうのだろうか。
鍵の持ち手には鍵番号と呼ばれる固有の番号が刻印され、その裏面にはメーカー名が記されている。
一瞬でも、飲食店のテーブルや職場のデスクに鍵をそのまま置くと、鍵番号などをスマートフォンで撮影されてしまうリスクがある。
また、一般的なギザギザしたタイプの鍵では、その形状の写真からでも、合鍵を作ることが技術的に可能という。

交流サイト(SNS)に鍵番号や鍵の形状が分かる写真をあげてしまうケースにも注意したい。
鍵に付けているキーホルダーを撮影しようとして鍵番号が写り込んでしまう場合などが考えられる。現在のスマートフォンのカメラは高性能なため、背景にも気を配る必要がありそうだ。
鍵を複製されないための対策を、島津さんは「鍵屋さんで作る合鍵には通常、鍵番号が刻印されていません。普段持ち歩く鍵は、合鍵にしましょう」と呼びかける。
合鍵には合鍵の品番が刻印されているといい、鍵番号が刻印された純正キーは自宅の安全な場所に保管しておくことを勧めている。
純正キーが複数ある場合は、鍵番号をやすりで削る選択肢もある。鍵番号を隠す市販の「キーカバー」を装着することも、リスクを減らす効果がある。
防犯性の高い鍵への交換も対策の一つだ。島津さんは「闇バイト」が絡んだ強盗事件を受け、「出入り口の防犯対策についての相談が増えています」と話す。
登録した人が認証番号や登録者情報を提出しないと合鍵が作れない登録制の鍵や、鍵穴がなく暗証番号やカードキー、スマートフォンを使う電子錠(スマートロック)がある。
Xで7月下旬に話題となったのが「勝手に合鍵を作られないようにするシール」だ。
パソコン周辺機器製造販売の「サンワサプライ」(岡山市)の「鍵複製防止セキュリティシール」という商品で、紹介する同社のXの投稿は113万件表示された。

鍵番号を隠すように貼って使うもので、はがすと跡が残るようになっている。缶入りキャンディーのふたに貼られたシールをはがすと、「開封済」と跡が残る仕組みと同様だ。
この投稿に対して、Xではメーカー名と鍵番号を知っていれば、合鍵が作れることに驚くコメントもあり、まだ知られていない状況がうかがえる。
島津さんは「これまでもXの投稿などで一時的に話題になることはありましたが、まだ対策の必要性が浸透していません。これからも情報を発信していきます」と話している。【御園生枝里】
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