国連事務総長「長崎の記憶を平和への決意に」 祈念式典あいさつ全文

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記念碑や慰霊碑などが並ぶ長崎市の平和公園=同市で2025年4月30日午後3時26分、尾形有菜撮影 拡大
記念碑や慰霊碑などが並ぶ長崎市の平和公園=同市で2025年4月30日午後3時26分、尾形有菜撮影

 長崎は9日、米軍による原爆投下から80年の節目を迎えた。この日、長崎市の平和公園で営まれた平和祈念式典で読み上げられた国連のアントニオ・グテレス事務総長のあいさつの全文は次の通り。中満泉事務次長(軍縮担当上級代表)が代読した。

 長崎が一発の原子爆弾によって壊滅的な被害を受けてから、今日で80年が経(た)ちました。

 奪われた何万もの命を悼み、愛する人を失ったご家族と共に、その深い悲しみに心を寄せます。

 そして、被爆者の皆様の勇気と証言に敬意を表します。その数は年々少なくなっていますが、被爆者の方々の声は、永遠に私たちの道しるべとなり、平和への道を照らし続けます。

 長崎の方々にも心から賛辞を送ります。想像を絶する破壊を乗り越え、並外れた力強さと忍耐力を発揮し、平和と文化、そして国際的なつながりを象徴する都市を築き上げました。

 長崎は、世界にとって希望の灯です。

 今年はまた、国連創設80周年でもあります。国連は、戦争の惨禍から将来の世代を救うという使命のもと、世界大戦後の惨憺(さんたん)たる状況の中からその教訓をもとに誕生しました。国連総会が初めて採択した決議が核軍縮であったことは、決して偶然ではありません。

 80年を経た今も、核軍縮は私たちの最優先課題のひとつです。

 しかし今日、核兵器の脅威が再び世界に影を落としています。核兵器は国家安全保障戦略の中核に据えられ、威嚇の手段として振りかざされています。軍事費が過去最高を記録する一方で、平和と持続可能な開発への投資は低迷しています。

 それでもなお、私たちは希望の兆しを見出(みいだ)しています。世界は今、進むべき道を改める必要性に、ようやく気付き始めています。

 長崎・広島で原爆被害にあわれた方を代表する団体である「日本被団協」は、核兵器廃絶に向けた啓発活動の功績により、2024年のノーベル平和賞を受賞しました。

 また、昨年の「未来のための協定」において、各国は核兵器のない世界への決意を改めて表明しました。

 軍拡競争の先に、平和と安全はありません。対話、外交、信頼醸成、透明性の確保、そして軍備管理・削減。今こそ、これら様々(さまざま)な軍縮の手段を活用する道に立ち戻るべきなのです。

 各国は、言葉を行動に移さなくてはなりません。核兵器禁止条約が生み出した機運を追い風に、核兵器不拡散条約(NPT)を柱とする国際的な核軍縮体制を、今こそ強化していかなくてはなりません。

 長崎の犠牲者を追悼するだけでなく、その記憶を胸に、平和への決意を新たにしましょう。過去の惨劇を心に刻むことは、今日と明日の平和に向けて私たちを駆り立てます。

 今こそ、核兵器のない世界を目指し、共に歩みましょう。

2025(令和7)年8月9日

 国際連合事務総長 アントニオ・グテレス

(軍縮担当上級代表の中満泉事務次長代読。原文は英語)

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