長崎市長、核戦争への強い危機感表明 80回目の長崎原爆の日

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長崎への原爆投下から80年となり、長崎平和宣言の後に一斉にハトが放たれた平和祈念式典の会場=長崎市で2025年8月9日午前11時13分、北山夏帆撮影 拡大
長崎への原爆投下から80年となり、長崎平和宣言の後に一斉にハトが放たれた平和祈念式典の会場=長崎市で2025年8月9日午前11時13分、北山夏帆撮影

 米軍が長崎に原爆を投下してから80年となった9日、長崎市の平和公園で平和祈念式典が開かれた。鈴木史朗市長は平和宣言で、ノーベル平和賞を昨年受賞した日本原水爆被害者団体協議会で代表委員を務めた山口仙二さん(2013年に82歳で死去)が国連演説で訴えた「ノーモア・ヒロシマ、ノーモア・ナガサキ、ノーモア・ウォー、ノーモア・ヒバクシャ」を引用。世界各地で激化する紛争の即時停止を訴え、世界が核戦争に突き進むことへの強い危機感を表明した。

 山口さんは14歳の時、動員されていた爆心地の北約1・1キロの軍需工場で被爆。顔や上半身に大やけどをしケロイドが残った。鈴木市長は、山口さんが1982年に被爆者として初めて臨んだ国連本部での演説で「私の顔や手をよく見てください」と呼び掛け「ノーモア……」と訴えたことに触れ、「この心の底からの叫びは、被爆者の思いの結晶そのもの」と強調した。

 また、各国の指導者に対し、26年に米ニューヨークで開かれる核拡散防止条約(NPT)再検討会議で核兵器廃絶を実現するための具体的な道筋を示すよう求めた。

 日本政府には憲法の平和理念と非核三原則の堅持、核兵器禁止条約への署名・批准、核抑止に頼らない安全保障政策への転換などを訴えた。長崎の爆心地から12キロ以内で原爆に遭いながら国が指定した援護区域の外にいたため被爆者と認められない「被爆体験者」の救済も要請した。

 石破茂首相はあいさつで、6日の広島市での平和記念式典に続き「『核兵器のない世界』の実現に向けた国際社会の取り組みを主導していくことこそが我が国の使命」と述べたが、核兵器禁止条約には触れなかった。

 式典では、この1年間で死亡が確認された3167人(3冊分)の原爆死没者名簿が奉安され、奉安者数累計は20万1942人になった。

 式典には94カ国・地域と欧州連合が参列。核保有5大国では中国以外の4カ国が参列し、ロシアはウクライナ侵攻後に市の招待がなかった年を挟み4年ぶりとなった。24年にパレスチナ自治区ガザ地区の情勢を踏まえ招待しなかったイスラエルも出席した。

 式典後には、首相が被爆者4団体代表から要望を聞く場に被爆体験者団体の代表が2年連続で出席したが、昨年設けられた発言の機会はなかった。【尾形有菜】

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