名古屋市は8日、有識者や障害者福祉団体関係者らでつくる市障害者施策推進協議会を開いた。木造復元を目指す名古屋城天守閣のバリアフリーを巡る議論では、障害当事者の事業計画段階からの参画や、天守閣最上階までアクセスできるエレベーターの設置を求める意見が出た。
天守閣整備事業は2023年の市主催の市民討論会で一部参加者が車いす利用者に差別発言を行い、市の対応への批判もあり、事実上ストップしている。
差別発言問題を受け市は今年5月、事業を検証し、今後の方針を示す「総括」をまとめた。スケジュール優先で事業を進めた点やバリアフリー方針を巡って障害者団体と対話する姿勢が欠けるなど、人権問題の認識が不十分だった点などが問題に適切に対応できなかった背景とした。
市は今後、障害当事者と建設的対話の場を設け、バリアフリー方針を検討するとしているが、協議会で委員の一人は「対話はバリアフリー方針の決定段階だけでなく、設計から完成まで一貫して行われるべきだ」と提案した。
前名古屋市長の河村たかし衆院議員は天守閣のアクセス手段として小型昇降機の導入を打ち出す一方、昇降機の設置は「天守閣1、2階まで」と発言するなど、最上階(5階)までの設置には否定的だった。市は「可能な限り上層階までの設置を目指す」としているが、委員から「現市長は障害者や高齢者が5階まで上がれるようにする意向があるのか」と尋ねる場面もあった。
市は5階までの昇降機設置が構造的に可能かどうか検証し、木造天守の史実性とバリアフリーの両立を考慮した上で最終決定するとしている。会議終了後、広沢一郎市長は決定時期について「拙速とならないようにしているので今は明確には申し上げられない。きょうの意見をもとにしながら、どうしたらみんなが喜べる名古屋城になるか、考えながら進めていきたい」と述べた。【式守克史】
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