
7月の参院選で、自民党と公明党が大敗し、衆参両院で少数与党に転落した。今後の政権運営は不透明さを増している。
外国人やマイノリティーに対し排外的な主張を繰り返す参政党が躍進したことに、不安を抱く人もいるだろう。
しかし、社会運動に詳しい立命館大の富永京子准教授は「政治の不安定さを脅威として捉えるよりも、大切なことがある」と説く。社会運動の歴史を踏まえると、参院選後の日本はどう見えるのか。富永さんに聞いた。【聞き手・太田敦子】
<主な内容>
・不安定な政治状況は「チャンス」
・SNS上の運動に共通する落とし穴
・「変えられない」「燃え尽き」乗り越えるには
・「日本の社会運動は低調」本当か?
・富永氏が見る社会運動の将来
――参院選後、政治は混迷状態にあります。この状況をどう見ますか。
◆社会運動の研究者として言えば、選挙によって党の分裂や政界再編といった不安定な状況が始まることは、社会運動が発生し拡大する好機とも言えます。
日本は自民1強が長く続き、有権者も「変わらなくて、皆が同じ方向を向いているのが良い政治」と思いがちでした。
「ねじれ国会」で議会内の対立や意見の衝突が顕在化したり、少数与党で政権運営が不安定になったりすることに対し、ネガティブなイメージを抱く人が多いでしょう。
しかし社会運動にとっては「今がチャンスだ」と思うぐらいでいいのかもしれません。
――選挙戦では交流サイト(SNS)を中心に根拠のないデマや誹謗(ひぼう)中傷も飛び交いました。不安定な状況を前向きに捉えられない人もいるのでは。
◆排外主義的な運動も「社会運動」として研究されてきました。
私自身の立場を言えばもちろん許容はできません。すでに日本はさまざまな属性の人々から成り立っている、価値観や意見が多様で豊かな社会です。
「自分たちと違う人」を恣意(しい)的に区切って選別することは不可能だと思うし、仮にできたとして、物の見方や考え方が極めて貧しい社会にしかならないでしょう。
ただ、…
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