中国による侵攻描く異例の台湾ドラマ「零日攻撃」 制作陣の思いとは

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台湾ドラマ「零日攻撃」の一場面=零日文創提供 拡大
台湾ドラマ「零日攻撃」の一場面=零日文創提供

 中国による台湾侵攻を題材にした台湾ドラマ「零日攻撃 ZERO DAY ATTACK」(全10話)の初回が2日に公開され、注目を集めている。日本でも配信される予定で、制作陣は「現在の生活や家族を守ろうとする台湾人が直面する困難な決断を、世界の人々にも理解してもらいたい」と話す。

 ドラマは台湾沖に墜落した自軍の偵察機の捜索を名目に、中国軍が台湾周辺の海空域の包囲に乗り出し、上陸作戦が間近に迫ったとの想定で展開する。メディアに対する認知戦やインフルエンサーへの工作など開戦前に進む中国発の動きに対して、さまざまな階層の人々がそれぞれの生存をかけて葛藤する様子を描く。日本から俳優の高橋一生さんと水川あさみさんも出演した。

台湾ドラマ「零日攻撃」のポスター=零日文創提供 拡大
台湾ドラマ「零日攻撃」のポスター=零日文創提供

 政治的な敏感さから台湾有事を扱ったドラマが作られるのは異例だ。プロデューサーを務めた脚本家の鄭心媚さんによると、資金やスタッフを集めるのに苦労したといい、複数の台湾の制作会社からは「出演した俳優は今後使わない」と告げられた。台湾の映像産業が巨大な中国市場の誘惑を断ち切るのは難しい。

 鄭さんは「比較的遠い中国より、身近な台湾からの圧力の方がより強烈に感じる」としつつ、「最も敏感なテーマの作品を作り上げられれば、台湾で映像に携わる全ての人にとって大きな扉を開けることになる」と意義を語った。

 2日に台湾の公共テレビや動画配信サービスで公開された初回の内容には「リアルな想定で、自分ならどうするか考えさせられる」といった声がインターネットで上がった。

ドラマ「零日攻撃」のプロデューサー、鄭心媚さん=台北市で7月31日、黄冠傑撮影 拡大
ドラマ「零日攻撃」のプロデューサー、鄭心媚さん=台北市で7月31日、黄冠傑撮影

 一方、最大野党・国民党からは中国と距離を置く民進党・頼清徳政権による政治的な宣伝だとの批判が出ている。その根拠の一つが制作費約2億3000万台湾ドル(約11億5000万円)のうち、政府系の補助・投資が1億1000万台湾ドルを占めている点だ。総統府での撮影など当局や軍も協力した。

 中国国防省の報道官は7月30日の記者会見でドラマについて問われ、「民進党当局は両岸(中台)同胞の武力衝突によって台湾に被害を与えることをいとわないが、民心は得られず、必ず失敗する」と非難した。

 こうした批判に対し、鄭さんは特定の政党の宣伝のためではなく、内容の審査も受けなかったと反論。「台湾人の多様な姿や長年にわたって戦争の脅威にさらされた複雑な心情を表現したかった」と強調した。

 作品は8月15日から日本のアマゾンプライムビデオでも配信される。【台北・林哲平】

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