連日40度超を観測する記録的な酷暑が続き、暑さにうんざりしている人も多いだろう。10日は広い範囲で天気が崩れ、暑さは一旦和らぎそうだ。
ところが、熱中症で搬送された患者のデータをみると、搬送者数と気温の高さが必ずしも正比例しているわけではなく、熱中症への警戒は緩めるべきではなさそうだ。
気温の高さだけじゃない
東京消防庁によると、昨年6~9月の4カ月間に管内で熱中症で救急搬送されたのは7996人だった。
救急要請時の気温別にみると、35~37度で要請したのが計591人だったの対し、それより涼しい32度で最多の1340人となった。33度も1319人に上った。
救急要請時の気温と湿度を分析すると、気温は28~35度、湿度は50~80%までの範囲で救急搬送の要請が多く、温度だけでなく、湿度も考慮して考える必要があるようだ。
つまり、気温がそれほど高くなくても湿度が高ければ熱中症になるリスクは十分にあるのだ。
熱中症になりやすい「屋内」と「路上」
熱中症になった場所では「住宅等居住場所」が2888人で全体の36.1%を占めて最多となり、「道路・交通施設等」が34.7%(2774人)と続いた。
65歳以上の高齢者に限ると2126人(48%)が「住宅等居住場所」で熱中症になっていた。
このうち、自宅にいて入院の必要があるとされる中等症の熱中症で搬送された70代の高齢者のケースでは、外気温は26.3度しかなかった。
家族が異変に気付いて救急車を呼んだというが、このときの湿度は85%に達していたという。
なぜ湿度が関係?
なぜ湿度が高いと熱中症になりやすいのだろうか。
日本救急医学会理事で、同学会の熱中症および低体温症に関する委員会メンバーでもある横堀将司・日本医科大大学院教授は、体温を下げる体の仕組みが背景にあると説明する。
「私たちは、体の内側の熱を外へ放出するときに汗をかきます。その汗が蒸発することによって、気化熱が生じて体温を下げることができます」
横堀さんによると、湿度が高いとこのときに汗が乾きにくくなり、必然的に体の中の熱が外に出せなくなるため熱中症になりやすいといわれているという。
高齢者を気にかけて
どんな日に熱中症に気をつければいいのだろうか。
「まず、風がなく暑くて湿度が高い日は注意が必要です」
夕立があった時などに加えて、降雨の翌日にいきなり晴れて急激に気温が上昇する日も注意が必要だという。
「雨が降った翌日に晴れると湿度も気温も高く、熱中症になることが多くなります。暑さを感じにくい高齢者は気付くと熱中症になっている場合もあるので、エアコンを適切に使ったり水分をこまめに摂取したりすることに加え、周囲の人が高齢者に声かけをしたりすることも大切です」
東京消防庁管内では、過去5年間の6月から9月までに、熱中症で救急搬送された人は疑いも含めて3万331人に上っている。
暑い日が増えたためとみており、2022年以降は右肩上がりの状況が続いている。
また、中等症以上と診断された65歳以上の人は、昨年6~9月だけで2126人に上っている。
体温調節機能が低下して暑さを感じにくくなっている高齢者はエアコンの冷房や除湿機能を積極に活用するなど注意が必要だ。【山本萌】
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