7月30日に発生したロシア・カムチャツカ半島付近を震源とするマグニチュード(M)8・8の地震に伴う津波警報と注意報は全面解除まで32時間もかかり、海外で起きた地震としては最長となった。その要因について、何度も押し寄せる反射波が影響したとのシミュレーション結果を東京大地震研究所の三反畑修助教(地球物理学)らのチームがまとめた。
気象庁によると、1980年以降で津波警報などを発表して50センチ以上の津波を観測した地震の中で、全面解除までに最も時間がかかったのは2011年の東日本大震災(M9)で約51時間だった。海外で発生した地震で最長だったのは10年のチリ中部沿岸地震(M8・8)の約24時間で、今回はそれを大きく上回った。
なぜ異例の長時間となったのか。三反畑さんは、シミュレーション結果を基に二つの理由を挙げる。
一つは波が陸地にぶつかって跳ね返る反射波だ。震源から直接到達する津波に加え、カムチャツカ半島などにぶつかって跳ね返った波は、傾斜した海底地形の影響も受けながら陸地での反射を多重に繰り返し、時間をかけて日本に次々と押し寄せた。
二つ目は、海底の山脈にぶつかって発生した反射波だ。北太平洋の西側にある天皇海山列などで散乱された波が遅れて到達していたという。更に波が日本から約5000キロ離れた南太平洋のソロモン諸島付近で反射し、日本方面に戻る様子も確認できたという。
三反畑さんによると、チリのように遠方だと第1波の到達までに時間がかかるものの、反射波の影響は比較的小さいという。その上で「今回の震源は日本に近く、こうした反射波が日本に何度も到達しやすかった。反射波が作用し合い、警報や注意報の基準をなかなか下回らなかったのだろう」と解説する。
今回の地震では、厳しい猛暑の中での避難となり、熱中症で緊急搬送された例も相次いだ。屋外での高台避難の暑さ対策の難しさや、避難所にエアコンがないといった課題が浮き彫りになった。
三反畑さんは「猛暑の中とはいえ、津波の危険性がある以上は、警報や注意報の解除はできない」と言う。近年、反射などに伴って津波がどの程度継続するかを予測する研究も進んでいる。「精度が高まれば、解除までの見通しをより具体的に示すことができ、暑さ対策などの準備を整えやすくなることが期待される」と話した。【渡辺諒】
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