高校野球・夏の甲子園1回戦(11日)
○県岐阜商6―3日大山形●
大粒の雨が体に打ち付けても、気持ちが切れることはなかった。
打線が逆転した直後の六回表、県岐阜商の2年生右腕・柴田蒼亮に試練が訪れた。
1死から打球を右膝付近に受ける安打を許した。さらに白球が見えにくいほど雨が強くなる中、犠打と捕逸で2死三塁のピンチとなった。
だが、柴田は冷静だった。
「直球を低めに投げることを意識した。練習試合でも雨の中の試合はたくさん経験しているので、不安はなかった」
次打者を2球で追い込むと、最後は117キロの外角高めの球で右飛に仕留めた。
ぐずついた天気とは裏腹に、県岐阜商のベンチは終始明るかった。初回はバント処理でバッテリーの呼吸が合わない場面もあったが、捕手の小鎗稜也は「ベンチで柴田に謝られたが、焦ることなく笑い話に変えました」
六回表終了後の51分間の雨天中断も味方につけた。全員で談笑しながら、体を動かし、リフレッシュする時間になった。
柴田は「ユニホームも着替えて、(ここからまた試合開始の)一回だと思って入りました」と振り返る。
中断後は直球の制球が定まらないと感じ、自らの希望でスライダーを多めにした配球も奏功し、7奪三振3失点で完投した。
春夏計4回優勝の古豪ながら、近年は初戦を突破できずにいた。22年夏は新型コロナウイルスの集団感染で選手10人を入れ替えて初戦に臨み大敗する不運もあり、夏の甲子園の勝利は16年ぶりだ。
藤井潤作監督は「いつも何か起こりそうな雰囲気が出るが、(雨が強まった)六回表を無失点に抑えて落ち着いた」。悪天候も乗り越え、創部100周年の節目に好発進した。【下河辺果歩】
Comments